インボイス制度(適格請求書等保存方式)の下で、返品や値引き等で売上代金を返還する場合には、適格返還請求書(返還インボイス)を交付する必要があります。今回は適格返還請求書(返還インボイス)について解説します。
適格返還請求書(返還インボイス)とは
適格返還請求書とは、返品や値引き等で売上代金を返還する場合に、売り手が買い手に交付しなければならない書類のことをいい、「返還インボイス」ともいいます。リベートや販売奨励金等として支払う場合も必要となります。
売り手は交付した適格返還請求書(返還インボイス)の控えを保存し、買い手は交付を受けた原本を保存しておくことが求められます。
なお、適格請求書(インボイス)と適格返還請求書(返還インボイス)を一つの書類にまとめることは可能です。例えば、当月販売した商品について適格請求書として必要な事項を記載し、前月の販売奨励金について適格返還請求書として必要な事項を記載するといった形で、一枚の書類にまとめることができます。
適格返還請求書(返還インボイス)の発行が必要となる場面
適格返還請求書は、次のような場面で、売り手が買い手に対して交付する必要があります。
・販売代金の値引きをしたとき
・商品の返品を受けたとき
・販売奨励金、リベートなどを支払ったとき(売上代金との相殺を含む)
・事業分量配当金を支払ったとき(売上代金との相殺を含む) など
適格返還請求書(返還インボイス)の記載事項
適格返還請求書(返還インボイス)には次の事項を記載する必要があります。
①適格請求書発行事業者の氏名(名称)と登録番号
②対価の返還等を行う年月日、返還等の対象となる取引を行った年月日
③対価の返還等の対象となる取引の内容、軽減税率対象である場合はその旨
④対価の返還等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額
⑤対価の返還等の金額に係る消費税額等または適用税率
②の「返還等の対象となった取引を行った年月日」は、課税期間の範囲内で一定の期間で記載することができます。例えば、月単位や「○月~△月分」といった記載も認められることとなります。また、返品等の処理を合理的な方法により継続して行っている場合は、返品等の処理に基づき合理的と認められる年月日(「前月末日」や「最終販売年月日」など)を記載することができます。
税込1万円未満の場合は返還インボイスは不要
少額の返金の場合でも返還インボイスを発行するのは実務上の負担が大きくなるため、実務上の負担に配慮し、返還額が税込1万円未満の場合は返還インボイスを発行する必要はありません。
1万円未満かどうかの判定基準は?
税込1万円未満かどうかは、返還した金額や値引き等の対象となる請求や債権の単位ごとに減額した金額で判定することになります。
(例)
①50万円の請求に対し、買手は振込手数料相当額440円減額した499,560円を支払った場合
(売手は、440円を対価の返還等として処理)
⇒ 返還した金額が1万円未満のため、適格返還請求書の交付する必要はありません。
② 40万円の請求に関し、1商品当たり100円のリベートを合計2万円、後日支払った場合
⇒返還した金額が1万円以上のため、適格返還請求書の交付が必要です。
売り手が振込手数料相当額を負担している場合
例えば、買い手が仕入代金を支払う際に必要となる振込手数料相当額を、売手が負担するために、振込手数料相当額(1万円未満)を売上値引きとして処理している場合には、売上値引きに係る返還返還請求書を交付する必要はありません。
まとめ
適格返還請求書(返還インボイス)について解説しました。返品や値引き等で売上代金を返還する場合についても細かくルールが決められていますから、しっかりと確認して不備のないようにしましょう。