法人の決算期は変更できる?手続きやメリット・デメリットを解説

法人の決算期は変更することができます。決算期を変更するメリットやデメリットはどのようなものがあるのでしょうか?決算期を変更するときはどのような手続きが必要になるのでしょうか?今回は法人の決算期の変更について解説します。

 

法人の決算期(決算日)の変更とは?

法人の場合は、通常、一年に一回決算を行う必要があります。法人の場合、この決算を行うタイミング(決算日)は自由に決めることができますが、法人の設立の際に作成する定款の中で定め、設立時に税務署等に対して届出をしています。この定款で決めている決算期(決算日)を変更することを決算期の変更といいます。

例えば、3月決算(決算日3月31日)の会社が、1月決算(決算日1月31日)など他の月に決算日を変更することができます。

決算日についてはこちらの記事も参考にしてください。

会社を設立するなら何月決算がいい?決算期(決算日)の決め方

 

決算期を変更するメリット・デメリット

決算期の変更には次のようなメリット・デメリットがあります。

まずはメリットから見ていきましょう。

 

決算期変更のメリット

決算期変更の主なメリットは次のとおりです。

メリット1)節税対策が可能となる

決算期を変更することによって節税対策が可能になることがあります。

例えば、12月決算の会社で、12月に臨時で多額の利益が計上される取引が出てきた場合、そのまま12月決算を迎えると節税対策を講じる間もなく、多額の利益が計上された決算となり、多額の税金を納めることになってしまいます。。

しかし、もしそれがわかったタイミングで、11月決算に変更するなど決算期を前倒しすれば、当期に関しては多額の利益が計上される前に決算を迎えることができます。この場合、翌期に多額の利益が計上されることになるため、1年間かけて節税対策を講じることができます。

ただし、いくら節税対策が可能になるからといって、決算期の変更は頻繁にするものではありません。

メリット2)実情に応じた決算期にすることができる

一般的に決算期は繁忙時期を避けた方がよいと言われています。

その理由の一つは、忙しい時期に決算の事務が生じることを避けることにあります。もう一つの理由は、節税対策のための時間を設けたり、資金繰りを楽にするということがあります。繁忙時期には多くの売上が計上されることになりますが、そのまま決算を迎えると、節税対策を講じることができません。また、売掛金の入金前に納税が必要となり資金繰りに支障が生じる可能性もあります。繁忙時期を避けていればそのような問題は起こりません。

とはいっても、会社設立のタイミングでは決算期はいつがいいか、正確にわからないこともあります。実際に事業を行って、現在の決算期に問題があれば、より適した決算期に変更することが考えられます。

メリット3)役員報酬の変更が可能になる

役員報酬は原則として1年に1回、決算後のタイミングでしか変更することができません(定期同額給与)。決算期変更を行うことによって、役員報酬の変更のタイミングを早めることができます。

 

決算期変更のデメリット

決算期変更の主なデメリットは次のとおりです。

デメリット1)消費税の免税期間が短くなる可能性がある

消費税の免税事業者である場合は、決算期を変更することによって課税事業者となるタイミングが早まる可能性があります。決算期変更が消費税の免税期間に与える影響を検討しておきましょう。

デメリット2)事務負担がかかる

決算期を変更するには、株主総会の開催や届出の提出など決算期変更にかかる事務負担が必要となります。また、変更後の決算のタイミングで、棚卸などを行い、決算・申告が必要となります。

デメリット3)前期比較などができなくなる

決算期を変更した期は12か月決算ではなくなります。そのため、売上や費用、利益などを前期比較する際、単純に比較することができなくなります。一年換算に調整するなどした上で比較するようにしましょう。

 

決算期を変更するための手続や期限

決算期の変更は次の手順で行います。

1.株主総会で定款変更の特別決議を行う

決算期は定款に記載されているため、定款を変更しなければなりません。。

そして、定款変更には株主総会の特別決議が必要となります。株主総会の特別決議は、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主(委任状、議決権行使書による行使を含む)の議決権の2/3以上の賛成が必要です。株主総会の開催後、議事録を作成します。

定款変更の株主総会は、変更後の決算日までに行う必要があります。

例えば、3月決算法人が、9月末に決算日を変更したい場合は、9月末までに株主総会を開催し、定款変更の特別決議を行わなければなりません。

 

2.税務署等に届出を提出する

変更後速やかに税務署や都道府県・市区町村に対して、法人異動届を提出します。明確な期限や罰則はありませんが、遅くとも決算期変更後の申告期限までには届出をしておかなければなりません。

先ほどの3月決算法人が9月末に決算日を変更する場合であれば、申告期限である11月末まで(申告期限の延長をしていない場合)には届出を行う必要があります。

なお、法人の決算期は登記事項ではないため、決算期を変更しても、法務局への登記申請をする必要はありません。

 

 

まとめ

決算期の変更について解説しました。決算期の変更は頻繁に行うものではありません。しかし、繁忙時期などの関係で、決算のタイミングが自社のビジネスモデルと合っていないと考えられる場合は、それを合わせるための有効な施策の一つです。影響などがよくわからない場合は、税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。