仮払金で経費精算をラクに!仕訳の方法やポイントを解説

「従業員の出張旅費がどれくらいかかるかわからない」という場合の対策方法には、ある程度の現金を「仮払金」として渡しておく方法があります。この記事では、仮払金によって従業員の負担を軽減し、経費精算を楽にする方法を紹介します。

 

仮払金とは?

仮払金とは、従業員の経費支払いのために、会社があらかじめ渡しておく現金に使う勘定科目です。仮払金を渡す時点では、経費の金額や勘定科目は確定していません。実際に仮払金を使って支払いを行うことで内容が確定したら、精算とともに正確な勘定科目に振り替えます。

例えば、出張旅費分を概算した金額の仮払金を会社から従業員へ渡しておき、実際に使った金額や用途について報告を受けたのちに「旅費交通費」の勘定科目で仕訳をし直すようなイメージです。

宿泊費や交通費などが高額になりそうな場合、従業員が立て替えて支払うことが難しい場合も考えられます。こうした場合に、一定額の仮払金を渡しておくことで、従業員の負担を減らせます。

 

仮払金の仕訳

以下では、仮払金の仕訳例を見ていきましょう。

 経理から仮払金を渡したとき

3月1日、経理から従業員Aさんへ、出張旅費として仮払金を現金で30,000円渡したとします。Aさんは出張先で電車やバス、タクシーなどを使って移動するつもりですが、実際にどの交通手段を使うか、いくらかかるかまでは確定していません。この場合、仮払金を渡した時点で以下の仕訳を行います。

<3月1日の仕訳>

仮払金 30,000 現金 30,000

従業員から精算書を受け取り精算したとき

3月5日、Aさんが出張から戻り、仮払金の報告書が提出されたため精算しました。出張は3月2日から4日であったとします。仮払金の全額を過不足なく交通費に利用した場合、以下の仕訳を行います。

<3月5日の仕訳>

旅費交通費 30,000 仮払金 30,000

資産として計上していた仮払金を0にし、費用として旅費交通費を30,000円計上する処理です。

ただし、実際には上記のように全額をきっちり使い切るわけではありません。以下では、仮払金が余った場合と、Aさんが一部を自腹で立て替えている場合を考えてみましょう。

【仮払金が余ったとき】

3月5日、Aさんが出張から戻り、仮払金のうち25,000円を旅費交通費として使い、5,000円仮払金が余っているとの報告を受けました。この場合は、5,000円をAさんに返金してもらい、以下の仕訳を行います。

<3月5日の仕訳>

旅費交通費 25,000 仮払金 30,000
現金 5,000

25,000円のみ旅費交通費として計上し、5,000円の現金が増えた(戻ってきた)という処理です。

【仮払金に不足があるとき】

3月5日、Aさんが出張から戻り、仮払金を含めて33,000円を旅費交通費として使ったとの報告を受けました。立て替えられている3,000円をAさんへ現金で返した場合、以下の仕訳を行います。

<3月5日の仕訳>

旅費交通費 33,000 仮払金 30,000
現金 3,000

仮払金の全額とともに、Aさんが立て替えている3,000円も旅費交通費として計上します。

 

仮払金の精算フロー

仮払金を精算するためには、しかるべき手順を整えておく必要があります。主な手順は、従業員に仮払金を渡すための申請と、仮払金の精算の2つに分けられます。以下で詳しくみていきましょう。

仮払金の申請

仮払金が何のためにどれくらい必要になりそうかを把握し、適切な仮払金の額を決めるために、従業員に申請してもらう必要があります。以下の項目を設けた「仮払経費精算書」のフォーマットを用意しておくとスムーズです。

・申請する従業員の氏名
・仮払金の金額・用途
・仮払いを受けたい日にち
・申請日

経理は内容を確認し、承認ののちに仮払金を渡すようにしましょう。

 仮払金の精算

仮払金を何のためにいくら使ったのかを確認するために、従業員から報告を受ける必要があります。以下の項目を設けた「仮払金経費精算書」のフォーマットも作っておきましょう。

・精算する従業員の氏名
・経費を使った日にち
・経費の金額・用途

報告書とともに、レシートや領収書を提出してもらい、余った仮払金は返してもらいます。

 

経理担当者は、証拠となるレシートや領収書が揃っているか、記載内容に誤りがないかなどを確認し、従業員の立替分があれば返金します。返金の方法は、現金のほか給与とともに支払うなど会社によって異なります。

 

仮払金と混同しやすい勘定科目

仮払金と間違えやすい勘定科目には、以下のものがあります。

・立替金
・預け金
・預り金
・前払金

それぞれについて知っておき、混同しないように注意しましょう。

立替金

立替金とは、本来は会社以外が支払うべき金額を、会社が一時的に立て替えて支払っているものを指します。判断のポイントは「誰が立て替えているか」であり、それが会社であれば「立替金」を使います。会社が支払うべき金額を従業員が立て替えている場合は、「未払金」を使って仕訳を行います。

預け金

預け金とは、会社が第三者へ一時的に預けているお金のことです。例えば、資産運用を委託する際に委託先に預ける運用資金が挙げられます。債務が支払われない場合の担保として支払われる保証金も、預け金の1つです。交通系ICカードの利用開始やレンタカーの利用に際して、未払などのトラブルを防止するために支払いが求められるデポジットも、預け金として挙げられます。

預り金

預り金とは、会社が他者から預かり、会社を通して支払うお金のことです。主なものとしては、従業員の給与から天引きした社会保険料や国民年金保険料、源泉所得税などがあります。これらの預かり金は、最終的には会社がしかるべき相手に支払います。

前払金

前払金とは、商品やサービスを受け取る前に、代金の一部または全部を支払う場合に使う勘定科目です。商品の手付金や年払いのサービス代金を初月に支払う場合などに使われます。

 

経費精算をより楽にする方法は?

仮払金は主に経費の精算に使われる勘定科目であり、従業員による経費の立替を避けるために有効です。しかし、申請や精算には手間がかかること、現金のやり取りを伴う場合は小口現金の管理が必要になることなど、面倒な点もあります。

経費精算をより簡単にするには、経費精算システムや法人のクレジットカードの活用などが有効です。経費精算システムを使うことで、紙を使わず申請や承認ができるようになります。レシートや領収書を写真で共有できるシステムもあります。法人のクレジットカードを従業員の経費精算用に複数枚用意しておけば、従業員がお金を立て替えることなく経費を使えます。使用履歴が残る点も法人カードのメリットです。

経費精算業務の負担が大きい場合は、仮払金を使わない以上の方法も検討するとよいでしょう。

 

まとめ

仮払金とは、経費がいくらかかるかわからない場合に、あらかじめ渡しておく現金を指します。仮払金によって、従業員による経費立て替えの負担を軽減できます。仕訳は、仮払金を渡したときと、報告を受けて過不足を精算したときの2回必要です。

ただし、仮払金は事前の申請と実際に使った経費の報告、現金の受け渡しが必要です。そのため、経費精算システムや法人カードなどの方法を検討してもよいでしょう。自社に合った方法で経費精算を行うことが大切です。