重要な経営指標の一つに「労働分配率」というものがあります。この労働分配率とはどのような経営指標なのでしょうか?どのように使えばいいのでしょうか?今回は労働分配率についてポイントをわかりやすく解説します。
労働分配率とは?労務分配率の計算式は?
労働分配率とは企業の生産性を見るための重要な経営指標の一つで、次の計算式で計算します。
付加価値は、売上高から売上原価や外注費など外部業者への支払を差し引いて計算しますが、粗利益と考えるとよいでしょう。
人件費には、給料や賞与の他、退職金、法定福利費、福利厚生費等も含みます。
この指標を見れば、付加価値(粗利益)のうち、人件費がどれくらいの割合を占めているかがわかります。
事例で見てみましょう。
この事例で労働分配率は次のように計算されます。
この場合、稼いだ粗利(付加価値)の50%を人件費として分配していることとなります。
一般的には、労働分配率は50%以下が良好、70%以上が危険と言われています。
事業を継続するためには、稼いだ粗利益の中から人件費や人件費以外の経費を支払って、さらに利益を残していかなければなりません。労働分配率が高すぎると賃料や広告費など人件費以外の経費を支払う余力がなくなってしまいますから、高すぎるのは危険なのです。しかし、業種や置かれている状況によっても異なるので、一概に「〇%」が目安と言うことはできません。
労働分配率の見方
①業種や置かれている状況で適正水準が異なる
労働分配率はビジネスモデルによって適正な水準がバラバラです。労働集約的な業種であれば労働分配率は高くなりますし、そうでない業種であれば労働分配率は低くなります。
同じ製造業であっても、最新の生産設備のある大企業とそうでない中小企業でも異なってくるでしょう。そのため、一概に「〇%」が適正と言うことはできません。業種や自社の置かれている状況によって適正水準を見つける必要があります。
②労働分配率は高すぎても低すぎてもダメ
同業他社と比べて、労働分配率が高いということは、労働生産性が低くなっている可能性があります。利益を圧迫し、同業他社よりも戦略的な投資を行う余力が低いということですから、将来的に競争に敗れてしまう可能性もあります。
一方、労働分配率が低いということは、労働生産性が高いことを意味しています。会社の側からするとそれはよいことなのですが、従業員の側からすると給与水準が低いという不満につながる可能性があります。このように労働分配率は単に低く抑えればよいというものでもありませんから、注意してください。
③1人当たりの人件費や付加価値など他の指標と併用する
労働分配率だけを見ると、分配は適正でも、給与水準が適正でない可能性があります。この場合、経営者からすると多くの給与を支払っているつもりでも、従業員側は「給与が低い」と不満を持ってしまうことになります。
このようにならないためにも、1人当たりの人件費や1人当たり付加価値など他の指標と併用して、適正な給与水準を達成しながら、適正水準の労働分配率を目指すことが大切です。
<1人当たり人件費>
1人当たり人件費=人件費÷従業員数
<1人当たり付加価値>
1人当たり付加価値=付加価値÷従業員数
労働分配率と人件費率の違いは?
人件費に関する経営指標には「人件費率(売上高人件費率)」があります。
この人件費率は、次の計算式で計算します。
人件費率(売上高人件費率)=人件費÷売上高
労働分配率が付加価値に占める人件費の割合であるのに対して、人件費率では売上高に占める人件費の割合となっています。
労働分配率を改善するためには
給与水準を引き下げると労働分配率は改善(低下)しますが、それはやがて従業員の不満・離職に繋がる可能性があります。それでは長期的に事業を成長させていくことは難しいでしょう。
給与水準を維持したまま労働分配率を改善するには、「労働生産性を高める」以外に方法はありません。つまり、1人当たりの付加価値を高めるということです。
そのためには、
業務の標準化、マニュアル化
労働環境の改善
教育研修の充実
ITツールの活用
最新の生産設備の導入
など、様々な方法が考えられます。
また、1人当たり付加価値が高まり、労働分配率が大きく改善されたら、その一部は決算賞与等の名目で分配すると、従業員にとっても生産性向上のモチベーションがアップするでしょう。
まとめ
労働分配率について解説しました。会社が持続的に成長をするためには、労働分配率を適正水準に保ちながら、給与水準も高めていく必要があります。どのようにして実現していくのか?労務分配率は経営方針とも密接にリンクしてくるのです。