会社や個人事業主などの事業者が、役員や従業員に給料を支払ったり、税理士や弁護士、司法書士などに報酬を支払ったりする際には、源泉徴収をしなければなりません。この源泉徴収とはどういう制度なのでしょうか?どのようにすればいいのでしょうか?ポイントをわかりやすく解説します。
源泉徴収とは?
会社や個人事業主などの事業者が、役員や従業員に給料を支払ったり、税理士や弁護士、司法書士などに報酬を支払ったりする際には、源泉徴収をしなければなりません。
源泉徴収とは、給料や報酬から、その本人が負担すべき所得税等を徴収(天引き)し、その徴収した所得税等を、会社などから税務署に納める手続きのことをいいます。源泉徴収をしなければならない事業者のことを「源泉徴収義務者」と言います。
源泉徴収した所得税等は、原則として、翌月10日までに税務署に納めなければなりません。しかし、一定の場合には「納期の特例」を使って、年2回にまとめて納付することができます。
源泉徴収は主に次のような場面で必要となってきます。
・給与や賞与を支払ったとき
・退職金を支払ったとき
・原稿料や講演料などを支払ったとき
・弁護士、税理士、司法書士等に報酬を支払ったとき
・外交員等に報酬を支払ったとき
・配当を支払っとき など
源泉徴収の対象となった給与や報酬がある場合は、一年分の支払額や源泉所得税額をまとめた「源泉徴収票」「支払調書」「法定調書合計表」などの法定調書と呼ばれる書類を作成し、税務署に提出しなければなりません。
源泉徴収税額の計算方法
源泉徴収すべき金額は、支払う報酬等の種類によって異なります。ここでは主なものについて解説します。
役員報酬や従業員の給料
「給与所得の源泉徴収税額表」を使って、源泉徴収税額を算出します。
事例で見てみましょう。
扶養親族等の数:2人
この事例の場合、その月の源泉徴収税額は5,130円となります。
「給与所得の源泉徴収税額表」には甲欄と乙欄があります。従業員が「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している場合は「甲欄」を用い、提出していない場合には「乙欄」を用います。
なお、「給与所得の源泉徴収税額」は毎年更新されますので、必ず最新のものを利用するようにしてください。
弁護士や税理士の報酬
支払金額に応じて、次の計算式で源泉徴収税額を計算します。
源泉所得税の納期の特例とは?
源泉徴収した所得税等は、原則として、翌月10日までに税務署に納めなければなりません。
しかし、給与の支給人員が常時10人未満である場合は、納期の特例を使って、次のように年2回にまとめて納付することができます。
区分 | 期限 |
1月~6月分 | 7月10日 |
7月~12月分 | 翌年1月20日 |
(Youtube版『漫画でわかる会社の税金』より)
毎月の源泉所得税の納付は煩雑ですから、この納期の特例を利用すれば事務負担の軽減を図ることができます。ただし、税金をまとめて納付しなければならないので、納税資金を残すようにしておきましょう。
なお、納期の特例の適用を受けるためには、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出する必要があります。納期の特例の申請をすると、その申請をした月の翌々月の納付分からこの特例が適用されることなります。
また、納期の特例は、届出をすることにより、いつでもとりやめることができます。
源泉徴収をしないと不納付加算税・延滞税がかかる
会社等が源泉徴収をするのは任意ではなく、義務付けられています。
そのため、たとえ、本人から「自分で税金を払うから、源泉徴収しないで欲しい」と要請があったとしても源泉徴収をしなければなりません。
もし、税務署から源泉徴収をしていなかったことについて指摘があったときは、原則として、源泉徴収義務者である会社が源泉徴収税額を税務署に納めなければなりません。その後、会社と本人との間で本人から源泉徴収に相当する金額を精算することとなります。
また、源泉所得税は、納付期日を1日でも過ぎると、原則として源泉所得税の10%の不納付加算税が加算されます。ただし、源泉所得税の納付を忘れていたことに気づき、自主的に納付すると、不納付加算税は5%に軽減されます。なお、不納付加算税は、5,000円未満である場合など一定の場合には免除されることもあります。
この不納付加算税に加えて、納付期日から納付するまでの日数に応じて延滞税も加算されます。
このように源泉所得税を納めなかったらペナルティもありますから、期日までに必ず納めるようにしましょう。
まとめ
会社がしなければならない源泉徴収について解説しました。源泉徴収は、事業者からするととても煩雑な手続きですが、これにより従業員等は確定申告をせずに納税の手続きが済むため、従業員からするととても利便性の高い制度です。ペナルティもありますから、源泉徴収の制度を理解して、必ず手続きをするようにしましょう。