人生に不測の事態はつきものですが、その点は子育ても同じです。
子どもを持つ労働者が、育児を理由とする欠勤や遅刻、早退を急に申し出ることは、使用者として、当然想定しておかなくてはいけないことです。
今回は、一定の要件を満たす労働者が取得できる、子の看護休暇について、ご説明します。
その1. 子の看護休暇とはどういうものか
子の看護休暇とは、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」、通称「育児・介護休業法」の第16条に基づく制度です。
労働者が子育てをしながら仕事をつづけられるよう、設けられています。
けがをしたり、病気になったりした子どもの世話、または、病気を予防するために必要な世話をすることを目的として、労働者が利用できる休暇制度です。
病気を予防するために必要な世話とは、予防接種や健康診断などを指します。
とはいえ、親子でありさえすれば、子の看護休暇を取得できるわけではありません。
子の看護休暇制度の対象となる「子」は、小学校就学の始期に達するまでの子と定められています。
「小学校就学の始期に達するまで」とは、もう少し具体的に言うと、「子が6歳に達する日の属する年度の3月31日まで」です。
子の看護休暇を取得できる日数も、「育児・介護休業法」で上限が定められています。
一年度につき、5労働日までです。ただし、小学校就学の始期に達するまでの子が2人以上の場合は、10労働日まで取得することができます。
ちなみに、子ども1人につきではなく、労働者1人につき、5労働日(子が2人以上の場合は10労働日)です。
その2. 子の看護休暇の具体的な運用は
子の看護休暇は、日々雇い入れられる者を除く、すべての労働者が利用できる制度です。
ただし、あらかじめ労使協定を締結することで、下記の労働者を対象外とすることも可能です。
- 入社6か月未満の労働者
- 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
- 時間単位で子の看護休暇を取得することが、困難と認められる業務に従事する労働者
次に、子の看護休暇の取得単位ですが、1日単位だけでなく、時間単位で取得することもできます。
以前は、1日単位か半日単位でしか取得できませんでしたが、「育児・介護休業法」の改正により、2021年1月1日から、時間単位で取得できるようになりました。
そして、子の看護休暇を、無給休暇とするか有給休暇とするかですが、この点について、法の定めはありません。
つまり、子の看護休暇を無給休暇として扱っても問題はないのです。労働者が子の看護休暇を取得した日数、または時間分の賃金を控除することは、認められています。
事業主は、子の看護休暇の取得を希望する労働者に対して、証明書類の提出を求めることができます。
この証明書類については、医師の診断書に限定するのではなく、薬の領収書でも認めるなど、柔軟な対応が求められています。
その3. 法を上回る子の看護休暇の運用とは
前項までにご説明したのは、あくまでも法で定められた、子の看護休暇制度の内容です。ですから、企業として、法を上回る制度を設けることは可能です。
それどころか、法を上回る制度として、厚生労働省が配慮を求めている措置もあります。
それが、いわゆる「中抜け」です。
「中抜け」とは、労働者が就業時間の途中で、子の看護休暇を時間単位で取得することを指します。
法令で定められている時間単位での子の看護休暇は、始業の時刻から就業時間の途中まで、あるいは、就業時間の途中から終業の時刻までの取得についてです。
そのため、「中抜け」は義務ではありませんが、子育て中の労働者にとっては、あれば便利な制度でしょう。
ちなみに、子の看護休暇を分単位で取得することを認めるのも、企業の自由です。
さらに、労使協定で対象外とすることができる「入社6か月未満の労働者」についても、法を上回る運用が求められています。
労使協定を締結したとしても、一定の日数を取得できるようにすることが望ましいとされています。
また、子の看護休暇を取得できる日数を増やしたり、子の看護休暇を有給休暇として扱ったりすることも、もちろん差し支えありません。
まとめ
事業主からすれば、分単位での取得のような、法を上回る制度を導入し、運用することは、煩雑に思えるかもしれません。
ですが、法が定める義務にのみ固執していたのでは、労働者のモチベーションや定着率にも関わるかもしれません。
労働者が子の看護休暇制度を有効に利用できるよう、事業主にはできるかぎりの配慮が求められていると言えるでしょう。
ちなみに、「育児・介護休業法」は、2022年4月1日から、さらに改正が行われることになっています。
事業主が、労働者の育児と仕事の両立に配慮することは、今後ますます重要になっていくでしょう。