「あなたのお店の3ヶ月後の資金繰りは大丈夫ですか?」という質問にきちんと答える人は意外に少なく、なんとなく経営している人がとても多く感じます。特に雇っているスタッフの人数が少なければ少ないほど、その傾向にあるようです。
しかし、この「なんとなくやって来れてるから、大丈夫。」という状態が長く続くことが、大きな損を生んでいることがよくあります。きちんとコントロールしていればもっと利益を得ることができていたかもしれないからです。
そこで今回は、PLやBSなどを深掘りする方向ではなく、より現場でわかりやすい経営の指標として、常にチェックしていくべき点をご紹介したいと思います。
人件費3割、食材費3割はもはや過去の定説
私が飲食業界に入ったのが30年前。
その30年前に「昔から飲食店は、人件費3割、食材費3割って言われてるんだよ。」と教えられました。
つまり、この『人件費3割、食材費3割』という定説は、それよりもさらに昔に発信されたノウハウと言っていいのか分からないレベルのものです。
さらに「家賃は売上の1割」とかいう不思議な定説もあり、皆さんも一度は耳にしたことがあるかと思います。
しかし、これらを今の時代、鵜呑みにしていいのでしょうか?
色々聞き回ってみるとこれらの定説は、最低でも40年前にはすでに存在していました。
40年前といえば、携帯、ネットも今のようなに一般的になっておらず、行きたいと思う飲食店を探す方法は、クチコミかテレビ、雑誌がメインでした。
今のように自分の好みに合ったお店をどんな場所でもネット上で、ピンポイントで探し当てることはできないことから、40年前はかなり、お店の場所は重要で、今よりも商圏が狭く密度が高い状態だったことから、家賃はある程度高くても仕方がないという考え方でした。
しかし、今はそんなことはありません。
自信があるなら、駅から遠くても安い物件でお店をやった方がいいと考えて出店する人も多くいます。
個人店や小規模事業であれば、家賃を売上の3%程度に抑えているお店もたくさんあります。
そして、3割が理想と謳われた人件費や食材費に関しては、兼ねてからの労働人口の減少による給与の引き上げや輸送コストの上昇で、よほどのビジネスモデルでない限り、3割にまとめるのは難しくなってきています。
過去の定説のようなものは、必ず今の時代の状況に翻訳してから考えるべきでしょう。
そのまま鵜呑みにしては、危険な数字であることを認識してください。
人件費が抑えられる業態であれば、食材費は4割になってもやっていけるお店もあり、食材費が抑えられれば、人件費が4割近くでも成立するお店もあります。
ただし、私の経験則から『食材費+人件費=FL』が売上金額の7割を超えているお店は、健全な経営をできていないことがほとんどです。
このFL比率
「食材費+人件費」が売上金額の何%なのか?
これは、確実にチェックするべきです。
その経費は操作可能か?
あたりまえですが、毎日いくら売り上げれば黒字になるのか? これが経営者の一番気にすることです。
その計算をするにおいて一番大切なことは、
経営者が操作できる経費なのか?
それとも操作できない経費なのか?という点です。
最も分かりやすい経費を例に挙げると経営者が操作できない経費として代表するのは、お店の家賃です。
ほとんどの店舗でお店を開業した時に賃料が決められていることでしょう。この賃料はコロナショックなどの有事でない限り減らしたりすることはなかなかできません。
この他に、商店会費、リース料、プロバーダー料などがありますが、これは基本的に日々の努力では金額が変わらないものです。
この変わらない固定費というものを確実にリストアップして、それ以外の操作可能な経費というものをしっかり把握しましょう。
操作可能な経費の主なものは、人件費、食材費、消耗品費、水道光熱費(一部)などです。
これらの経費をどう抑えて、コントロールするかが経営能力の必要なとこで、その中でもお客さんが多かろうが少なかろうが最低限必要な人件費とお客さんの数に比例する人件費に切り分けて考えることが大事です。
三大経費に割って入ってくる費用
人件費、食材費、家賃の3大経費以外で、今の確実に増え続けている経費があります。
通信費と福利厚生費です。
通信費に関しては、以前は電話代と郵便関連の代金がほとんどでしたが、現在はインターネット関連がほとんどを占めています。
どの勘定科目を採用するかにもよりますが、クラウドサービス、アプリ、システムの利用料、プロバイダー契約、光回線契約などで小規模店舗でも3万円以上の支払いとなっている店舗もあります。
しかし、インターネット関連の経費に関しては、予約の管理やレジの操作、勤怠管理などで人件費の削減に大きく貢献しているのです。
目安としては、売上金額の2%を超えても、人件費を3割に近づけることができるのならば、ここはシステム、アプリの利用を進めてある程度の通信費の増大は目をつぶるべきと考えます。
もう一点は、福利厚生費です。
飲食業界でも当然のことながらホワイト企業であることが求められ、ここ数年、スタッフの福利厚生の義務の範囲が広がり、充実を図った店舗も多いと思います。
これにより、なるべく正社員を雇わないようにすれば、利益は出るという従来の定説も崩れ去ってしまいました。
雇用保険や健康保険などの経費が膨らんできており、人を雇うことでかかってっくる経費は、今後減ることはないのです。
今後は、人件費の3割程度が法定福利として当然のようにかかってくることを想定して、収益予測を立てていかなければなりません。
まとめ
これ以外にも把握しおくべき点はたくさんありますが、金銭管理、資金繰りのプロである専門家に日頃から相談し、常に現在の経営状況を把握し続けることが、何よりも大切です。