起業をして、これから創業融資の事業計画書を作成する方の中には、「事業計画書なんてとりあえず項目を埋めればよいのだろう」と考えている方もいるのではないでしょうか?
しかし、それは大きな間違いです。
なぜなら、事業計画書には作成すべき順番や、計画に入れた方がよいいくつかの項目があるため、これを無視するとまとまりのない計画となったり、評価の低いものとなってしまいます。
ポイント1:自己資金と融資額のバランスを考える
日本政策金融公庫の新創業融資制度では、創業前または創業後1期を経過する前の方については「創業にかかる経費の1/10以上の資金を保有していること」という条件があります。
これを「自己資金要件」といいます。
しかし、1/10の自己資金を用意したからといって、残りの9倍の額の融資が受けられるかといえばそういうわけではありません。
では、実際に受けられる融資額はどの程度かといえば、一般的には「自己資金の3〜4倍程度」が目安となります。
つまり、150万円の自己資金がある場合、融資が受けやすい額としては500万円程度ということになります。
このように自己資金の要件が満たせているからといって、残りの9/10についての融資が受けられるわけではないということに注意が必要です。
ポイント2:設備資金と運転資金の違いに注意する
融資の申込みの際には、ほとんどの方が運転資金と設備資金の両方を申し込むと思いますが、その際に考えなければならないのが、それぞれの資金の特徴です。
運転資金や設備資金には、一般的に次のようなものが該当します。
【運転資金】
家賃(仲介手数料、礼金を含む)、仕入代、人件費、交通費、通信費、宣伝広告費、雑費
【設備資金】
保証金や敷金、内・外装費、厨房などの設備費、車両の購入費
まず、設備資金については、その設備が必要と認められ、金額の根拠が明らかとなる見積書があれば、金額にかかわらずこれを認めてもらえるというのが原則です。
ただし、運転資金については、いくらでもこれを認めてもらえるというわけではありません。
なぜなら、本来、運転資金とは
① 事業を始めるときに必要となる営業資金(当初の仕入れや備品代など)
② 事業開始後に売り上げたものの回収ができるまでの資金
というのが本来の中身だからです。
①の事業を開始したときの仕入れや営業のための費用が必要になるということについては、お分かりいただけると思います。
②についてはどういうことかといえば、これは営業を始めた場合には掛けで販売する機会が生じますが、その代金が回収できるまでには約1~3ヶ月の時間がかかります。
しかし、これを待っていたのではその間の手持ち資金がなくなってしまうため、資金の回収後でなければ営業をすることかできなくなってしまいます。
このような不都合が生じないよう、その回収期間における資金を補填する意味で融資されるのが運転資金となります。
そのため、飲食店のような現金商売の場合には、①の資金の必要性はあっても、②のような代金の回収期間はないため、その分運転資金が減らされることがあります。
以上のような理由により、一般的に運転資金は約3〜4ヶ月分までしか認めてもらえないことが多いため、あまり長期間にわたる運転資金の申込みはしない方がよいといえます。
ポイント3:すべて融資の申込みができるわけではない
皆さんの中には、事業に関する費用であれば何でも融資が申し込めるとお考えの方もいるかと思いますが、融資には申込みができないものがいくつかあります。
たとえば「すでに支払いを済ませた資金」や「事業に関するものではあるが、必要性の薄い資金」などがこれにあたります。
一部の経費については、事業を始める前に支払いをしなければならないものがあります。
店舗や事務所を借りて営業する場合の敷金や保証金などがその代表です。
通常、テナントを借りる場合には、オーナーと賃貸借契約をしますが、この契約をした後でなければ内装工事や許認可の取得はできません。
しかし、融資が出るまでには約1ヶ月〜1.5ヶ月の時間がかかるため、これを待っていたのでは予定の時期に開業はできませんし、また、オーナーも融資が出るまで待ってはくれないのが普通です。
そのため、よい物件を確実に抑えるためには、その物件を見つけたときにすぐに契約をする必要がありますが、その際に必要となる保証金等は自己資金からこれを支払わなければなりません。
では、この時点で支払った経費は後日の融資の時に申込みの対象とできるかといえば、これは認められないこととなっています。
なぜなら、融資では「すでに支払ったものは申し込みの対象にできない」という原則があるからです。
そのため、この時点であまり大きな額を先払いしてしまうと、肝心の融資の時に申し込める経費があまりないということになってしまうため注意が必要です。
ポイント4:申し込む資金について根拠を用意する
融資の申込みをする際には、申し込みの対象になる経費についての根拠を用意する必要があります。
設備資金については、その対象となる設備や工事の見積書を用意しますが、運転資金についても価格の高いものについては見積書などを用意した方がよいといえます。
また、それほど金額が高くないものについても、通常の相場とかけ離れた額とならないように、カタログやネットショップの価格を参考にするようにしましょう。
また、人件費や交通費などについては、できればその積算の根拠についても、計画の中に記載するようにします。
例
人件費
社 員 200,000円/月 × 2人 = 400,000円/月
パート @1,000円/h × 6h × 20日 ×2人 = 240,000円/月
交通費 @600円(往復分)× 2人 × 20日 = 24,000円/月
ポイント5:保守的な計画にする
高い目標の事業計画であればあるほど、実現可能性が低くなるため、金融機関からすると事業計画の信頼性に疑問を持つこととなります。社内で高い目標を立てるのはよいですが、融資を受けるための事業計画は、実現可能性を重視した保守的なものとしたうえで、返済に支障のない利益が確保できるものとしておくことが必要です。
まとめ
創業融資を受ける際の事業計画書を作成するときのポイントについて解説しました。事業計画書は融資の可否に大きく影響します。ポイントを押さえた事業計画書を作成し、創業融資の獲得を目指しましょう。