会社を設立して、取引を開始するときに必要となるのが金融機関の法人口座。法人口座がないと代金の回収も支払も大変不便です。今回は会社設立後、法人口座を持つメリットや開設方法、おすすめの金融機関について解説します。
会社設立後、法人口座を持つメリット
法人口座とは、法人名義の金融機関口座のことをいいます。
会社設立後、法人口座を開設すると、次のようなメリットが得られます。
メリット1:法人の資金を管理できる
会社のお金の動きを法人口座で管理することができるため、資金の動きがわかりやすくなります。クラウド会計ソフトを使って、銀行の取引データを会計ソフトに直接連動すれば、会計処理にかかる手間も減らすことができます。
メリット2:取引先からの信用度が向上する
法人口座がなければ個人名義の口座を利用することになります。
その場合、取引先からすると取引をしている会社名義の口座ではないため、不安に感じてしまう可能性もあります。
法人口座を開設することによって、取引先がそのような不安を抱くこともなくなり、信用度が向上するでしょう。
メリット3:口座引き落としなど支払が便利
経費やクレジットカードの支払などを法人口座から引き落としにすれば、振込をする必要がなくなりますから便利です。
メリット4:税金のダイレクト納付が可能になる
法人税や消費税、源泉所得税、住民税の特別徴収など会社が税金を支払わなければならない場面は頻繁にあります。その都度、金融機関の窓口で納付するのは面倒です。
法人口座を開設し、ダイレクト納付の申込をしておけば、インターネットを利用して、簡単に納税をすることができ、納税にかかる手間を大きく減らすことができます。
会社設立後、法人口座を開設するタイミングは?
法人口座開設の申込をするには必ず登記簿謄本が必要となります。
そのため法務局に会社設立の登記申請を行っても、登記簿謄本が交付できるようになるまでは法人口座の開設を進めることはできません。
口座開設ができるまで時間がかかることもあります。
早く取引を始めるためにも、登記簿謄本を取得したら、すぐに開設の申込ができるようにしておくとよいでしょう。
法人口座の開設方法
法人口座は通常、次のような流れで開設します。
1.法人口座を開設する金融機関を決める
どこで法人口座を開設するかを決めましょう。
法人口座を開設できる金融機関は、都市銀行(メガバンク)、地方銀行、信用金庫、ゆうちょ銀行、ネット銀行とありますが、それぞれの銀行に特徴があり ます。どの金融機関で口座開設をするかは、ご自身の会社の業務内容や取引相手を考慮することも大切です。
なお、金融機関の支店は、本社から近いところを選ぶ必要があります。本社から離れていると不正利用などが疑われ、開設できないこともあります。
2.法人口座開設に必要となる書類を準備する
法人口座開設に必要となる書類は金融機関によって異なりますが、次のようなものが必要となります。実際に開設の申込をする前に、窓口や電話、インターネットなどで必要となる書類を確認しておくとよいでしょう。
<法人口座開設に必要となる書類>
履歴事項全部証明書(★)
銀行の届出印(★)
個人の身分証明書(★)
定款の写し(☆)
法人の印鑑登録証明書(☆)
税務署に提出した法人設立届出書(☆)
会社のパンフレットなど事業内容がわかるもの(☆)
事務所の賃貸借契約書、水道光熱費の領収書など事業所があることを証明できるもの(☆)
★:必須書類 ☆:金融機関によっては必要
3.金融機関窓口またはインターネットで開設の申込をする
必要書類が準備できたら、口座を開設したい金融機関の窓口へ必要書類を持参して出向きましょう。
インターネット専業銀行(ネット銀行)に口座を開設する場合は、Web上で申し込みを行います。
4.金融機関での審査後、口座が開設できる
金融機関内部で審査が行われ、問題がなければ口座が開設できます。
口座が開設できるまでの期間は金融機関やタイミングによって異なります。早ければ1日程度で開設できますし、長ければ数週間かかることもあります。
おすすめの金融機関とは?法人口座を作りやすい金融機関とは?
口座の不正利用を防ぐため、法人口座は個人名義の口座より審査が厳しく、口座開設まで時間がかかります。審査の基準や口座開設までの期間は、金融機関によって異なりますが、一般的には次のような傾向があります。
都市銀行(メガバンク)・・・審査が厳しく、必要書類も多い。口座開設までに時間がかかる。新設法人は口座開設が断られることもある。
地方銀行、信用金庫、ネット銀行・・・審査基準は一般的で、都市銀行と比較すると口座開設しやすい。数日で口座開設ができることもある。
また、銀行の中には創業者向けにサービスを展開している銀行があります。
例えば、GMOあおぞらネット銀行であれば、 設立して1年以内の法人の場合は、振込手数料が月20回まで無料になる特典も設けられています。1年間の特典が終了した後も、ネット銀行は通常の金融機関と比べて振込手数料が低く設定されていて、インターネットで簡単に振込ができるので便利です。口座維持手数料もかかりませんから損することはありません。
取引先から金融機関の支店の担当者を紹介してもらい、担当者に直接、法人口座開設の申込をすると、スムーズに開設できることもあります。
法人が金融機関口座の開設できない場合とは?その理由は?
残念ながら法人口座の開設の申込をしたとしても、審査で落ちてしまうと開設できません。
次のような理由で法人口座を開設できないことがあります。
・申込書類に不備や不足がある
申込書類に不備や不足があると開設できません。
この場合は、不備や不足を直した上で、再度申込をするとよいでしょう。
・会社の事業内容などが不明瞭
会社の事業内容などが不明瞭であると判断された場合、口座開設できないことがあります。金融機関からすると怪しい会社という評価となり、不正利用などを疑うことになるからです。
この場合は、営業を開始し、事業内容を説明できるようになったタイミングで、再度申込をするとよいでしょう。
・代表者や役員の個人に問題がある
代表者や役員が過去に問題を起こしていたり、反社会的勢力などと繋がりがあると疑われる場合には口座開設することができません。この場合は、問題とされていることが解消しない限りは口座開設はできません。
・風俗営業などを行う会社である
たとえ適法に営業していたとしても風俗営業を行う会社の場合は口座開設ができないことがあります。金融機関によって取扱いが異なる可能性もありますので、他の金融機関に申し込みをしたら法人口座を開設できる場合もあります。
なお、ある金融機関で審査に落ちたとしても、別の金融機関に申し込みをすると口座を開設できることはあります。
まとめ
会社設立後の法人口座の開設やおすすめの金融機関について解説しました。会社を設立しても、法人口座がないと本格的に営業を始めることが難しいでしょう。会社設立後はできるだけ早く法人口座開設の申込をするとよいでしょう。