残業時間を削減するための具体的な方法

繁忙期や突発的なクレーム対応など、様々な理由はあるでしょうが、どうしても所定の労働時間では業務を終えられない場合があります。そのような場合には、従業員の残業や休日出勤で対応することが必要です。

残業時間や休日出勤が増えれば、当然に人件費も増えてしまいます。発生した残業時間に対して割増賃金を支払うことが必要なのは当然です。しかし、その時間を減らし、人件費を抑制したいと考えるのも、また当然のことです。

当記事では、人件費削減に効果のある残業時間の抑制方法について、解説を行っています。人件費の削減を考えている方や、興味を持っている方は是非参考にしてください。

 

なぜ残業時間の抑制が必要か

長時間に及ぶ残業は、人件費として企業の重い負担となるだけでなく、従業員の心身の健康を蝕むものとなっています。そのため、企業の負担軽減や従業員の健康維持に残業時間の抑制が重要となるのは、当然のことです。

しかし、残業時間の抑制が必要な理由は、それだけではありません。2023年4月1日からそれまで、大企業のみを対象としていた月60時間超の残業に対する5割の割増率が中小企業にも適用となります。

この割増率引き上げによる負担増は、中小企業にとって非常に大きなものとなります。そのため、残業時間抑制は中小企業にとって喫緊の課題となっています。

 

 

新しい割増賃金率

2023年3月31日までの割増賃金率は次の通りです。

対象となる労働時間 割増率
法定時間外労働
月60時間以下 25%
月60時間超
(中小企業除く)
50%
休日労働 35%
深夜業 25%
時間外+深夜業
月60時間以下 50%
月60時間超
(中小企業除く)
75%
休日労働+深夜業 60%

上記表の中小企業を除くとされる部分が、2023年4月1日からは、中小企業にも適用されます。そのため、企業の規模を問わず月において60時間を超える法定時間外労働(残業)を行った場合には、その時間に対して5割の割増賃金を支払うことが必要です。

本来60時間超の残業に対する5割の割増率は、法改正された2010年から中小企業にも適用されるはずでした。しかし、この規定をそのまま適用しても、負担増に耐えられる企業ばかりとは限りません。そのため、賃金支払いの原資に乏しい中小企業に対しては、2023年3月31日までを猶予期間として設けることになりました。

 

 

残業時間を削減するための具体的な方法

我が国には、およそ420万もの企業が存在するとされています。そして、その99%は中小企業です。当然中小企業で働く従業員も数多く、今回の割増率引き上げは、労使双方に対して非常に大きな影響を与えることになります。

新しい割増率の適用後も残業時間に変化がなければ、従業員にとっては給与が増えることになり、デメリットはないように感じられます。しかし、その給与も支払い元である企業があってこそのものです。負担増に耐えられず、倒産という結果になってしまえば、従業員も路頭に迷ってしまいます。

そのようなことを防ぐためには、残業時間を抑制し、残業代の支出を減らさなければなりません。次項から残業時間抑制の方法について、項目を分けて解説を行っていきます。

 

残業申請制度の導入

残業を申請制にすることも残業時間抑制の方法の一つとして挙げられます。残業に当たって申請が必要になれば、残業代を目当てに、無駄な残業を行う従業員を減らすことが可能です。また、申請には理由が必要となるため、制度の導入によって、従業員一人ひとりが「この残業は本当に必要なのか」「もっと効率的に作業できるのはないか」と考える機会を与えることにもなります。

従業員が不公平に感じることがないように、制度の導入にはしっかりとした承認基準や様式を設けることが大切です。従業員によって承認されたりされなかったりでは、仕事に対するモチベーションも低下してしまいます。

残業申請制度は、申請の承認を行う上司の業務への深い理解がなければ運用できません。そのため、残業を行う者だけでなく、承認を行う者についても研修の実施などによって、業務への理解を深める必要があります。

 

残業ができない環境の構築

定時になれば、自動的にPCの強制シャットダウンを行ったり、オフィスを消灯したりといった強制的に残業できない環境を構築することも残業時間抑制方法の一つでしょう。また、ノー残業デーなどの設定も考え方としては同様です。

ただし、業務量が変わらないまま、これらの方法を取ってしまえば、従業員は自宅に仕事を持ち帰らざるを得なくなります。また、オフィスが消灯されても居残って残業する者も出るかも知れません。こういった隠れ残業を発生させないためにも、業務量と必要となる労働時間を正確に把握することが必要となります。

 

社内風土の改革

上司や同僚が居残っているのに、自分だけ退社できないとして付き合い残業を行う従業員もいます。また、残業することは、当たり前であり、しない方がおかしいとして残業を強制する風潮の企業もあるのではないでしょうか。

このような社内風土では、残業時間が増えてしまうのも止むを得ないことです。しかし「残業はするべきではない」という社内風土に改革ができれば、自ずと残業時間も減少するはずです。そのためには、まず範を示すべき役員や管理職が、率先して定時での退社を行うことが必要となるでしょう。

 

 

まとめ

長時間の残業は、企業には人件費の負担として伸し掛かり、従業員にとっては、心身の健康を蝕む原因となります。長時間残業は、まさに「百害あって一利なし」であり、企業の対策が求められています。

中小企業への割増率引き上げを、単なる負担増とネガティブに捉えていても状況が良くなるわけではありません。むしろ今回の割増率引き上げを社内風土や作業効率を見直すきっかけとしてポジティブと捉えてみてはいかがでしょうか。

既に従業員を雇っている企業も、これから起業し雇い入れを考えている方も、当記事を参考に、残業時間の抑制に努めてください。