経営者なら知っておくべき男女雇用機会均等法について解説

事業活動の開始や拡大によって新たに労働力が必要となり、労働者の雇い入れを行う場合があります。雇い入れの際の労働条件は、労使双方合意の上で原則として自由に決定が可能です。

しかし、使用者に比べて弱い立場である労働者を保護するために、法によって労働契約期間や労働時間、最低賃金など様々な制限が設けられています。そのため例え合意があっても、使用者が労働条件の全てを自由に決められるわけではありません。

制限の中には、性別による差別の禁止も設けられており、男女雇用機会均等法においてその内容が定められています。当記事では、男女雇用機会均等法についての概要や具体的に禁止されている内容などについて解説を行っているため、雇い入れを考えている方は是非参考にしてください。

 

 

男女雇用機会均等法とは?

男女雇用機会均等法は、「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」への批准条件整備のために「勤労夫人福祉法」を改正する形で、1985年に成立した法律です。法の下の平等を保障する日本国憲法の精神に則り、雇用分野における男女の均等な機会や待遇の確保等を法制定の主要な目的としています。

 

男女雇用機会均等法では、雇用や労働に関して、性別を理由とする一定の事項を禁止しています。
特に差別をする意図がなかったとしても、禁止事項に違反すれば問題となります。経営者や人事労務の担当者は男女雇用機会均等法について必ず理解しておきましょう。

では、順番に見ていきましょう。

性別を理由とする差別の禁止

個人事業主や企業といった事業主は、男女雇用機会均等法によって労働者の募集及び採用や人事配置、福利厚生などについて性別を理由として男女間で差を設けることを禁止されています。ただし一定の例外も存在しており、次から具体的に禁止されている差別内容と例外について解説を行っていきます。

 

募集及び採用における差別の禁止

事業主は、労働者の募集及び採用に関して、性別に関わりなく均等な機会を与えなくてはなりません。そのため次のような労働者の募集は男女雇用機会均等法違反となります。

・「男性5名、女性3名」のように男女で募集又は採用する人数に差を設けること

・募集に当たって「ウェイター」「ウェイトレス」「営業マン」「カメラマン」「セールスレディ」といった男性又は女性を表す語を含む職種の名称を用いること

・「男性歓迎」「男性向け」「女性歓迎」「女性向け」などの表示を用いること

ただし、「営業マン(男女)」「ウェイター、ウェイトレス募集」のように一方の性を排除しないことが明らかな場合は、男性又は女性を表す語を含む職種の名称を用いても問題ありません。

また、次のような職業は、表現上の理由や防犯上の理由、宗教上の理由などから均等な扱いが求められておらず、男女一方のみを募集しても法違反とはなりません。

・モデルや俳優、歌手など芸術又は芸能分野における表現上の要請がある職業
・警備員や守衛など防犯上の要請がある職業
・神父や巫女など宗教上の要請がある職業
・女子更衣室の管理人など風紀上の要請がある職業
・スポーツにおいて競技上の要請から、男女いずれかのみ従事させる必要のある職業

 

配置、昇進、降格、及び教育訓練における差別の禁止

事業主は、業務の配分及び権限の付与を含めた労働者の配置、昇進、降格及び教育訓練について性別を理由として差別的取扱いをすることが禁じられています。具体的な差別的取扱いとしては、次のようなものがあげられます。

・営業、基幹的業務、海外勤務を行う職務への配置に当たって、対象を男女一方に限定すること
・昇進試験実施の際に、合格基準を男女で異なるものとすること
・役職廃止の際に、当該役職に就いていた労働者について、男性は同格の役職に配置転換し、女性は降格させるなど異なった取扱いをすること
・教育訓練や実習、海外留学などの対象を男女一方のみに限定すること
・教育訓練の期間や過程を男女で異なったものとすること

 

福利厚生における差別の禁止

事業主は、次の福利厚生において労働者の性別を理由として、差別的取扱いをしてはなりません。

・住宅資金、生活資金、教育資金その他労働者の福祉の増進のために行われる資金の貸付け
・労働者の福祉の増進のために定期的に行われる金銭の給付
・労働者の資産形成のために行われる金銭の給付
・住宅の貸与

また、独身寮の貸与を男性のみとし、女性独身者にはアパートを借り上げて、貸与することは法違反となりません。しかし、男性独身寮のみを設け、独身寮に入居を希望する女性独身者には住宅手当を支給するような扱いは法違反となります。

 

職種及び雇用形態の変更における差別の禁止

事業主は、労働者の職種及び雇用形態の変更に関して、労働者の性別を理由として差別的取扱いをしてはなりません。

 

退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新における差別の禁止

事業主は、退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新について、労働者の性別を理由として差別的取扱いをしてはなりません。

 

間接差別の禁止

男女雇用機会均等法は直接的な性別による差別の他に、募集などに当たって一般的に男女間で差のある体力や身長体重といった条件を設け、間接的な差別を行うことも禁止しています。そのため事業主は、措置の実施が業務上又は雇用管理上特に必要とされる合理的理由がなければ、次の措置を講じてはなりません。

・募集又は採用に当たって、労働者の身長体重又は体力に関する条件を設けること
・労働者の募集や採用、昇進又は職種変更に当たって、転居を伴う転勤に応じることができることを条件とすること
・昇進に当たって、転勤の経験を条件とすること

 

ポジティブアクション

差別的取扱いとは、不利に扱う場合はもちろんのこと、有利に扱う場合も含まれます。そのため女性に限って役職への就任を認めるような扱いも男女雇用機会均等法において禁止されています。

ただし、職場における男女の均等な機会及び待遇の確保等の支障となっている事情を改善するために、女性労働者を有利に扱うことはポジティブアクションとして認められています。ポジティブアクションとして認められるためには、女性労働者の割合が4割を下回るなど、男性労働者に比べて相当程度少ないような特別な事情が必要です。

 

 

まとめ

近年における女性の社会進出は目覚ましく、もはや性別において就業上の差を設けることはナンセンスとなっています。「男性だから」「女性だから」といった理由で、役職への就任を認める又は認めないという扱いは、本人の能力を無視したものであり、人材活用の面においても損失でしかありません。

当記事では、男女雇用機会均等法の概要や具体的に禁止される差別の内容と例外について、解説を行ってきました。特に直接的な性別による差別だけでなく、間接的な差別も禁止されていることや、不利に扱う場合だけでなく、有利に扱う場合も差別となることには注意が必要です。

これから労働者の雇い入れを行う方だけでなく、既に雇い入れている経営者の方も当記事を参考にして、性別に囚われない人材活用を行ってください。