労働時間とは?経営者が知っておくべき労働時間に関する基礎知識

労働時間とは、その名の通り「労働をする時間」のこと。労働時間には法律で定められた上限があり、その上限を「法定労働時間」といいます。しかし中には例外を認められる業種もあるため、一概に「○時間」とは言い切れません。

そこで今日は、経営者が知っておくべき労働時間の基礎知識と、それぞれの項目で押さえるべきポイントをご紹介します。これから人を雇う予定がある人は、ぜひ参考にしてみてください。

 

その1.法定労働時間は「1日8時間」「週40時間」が基本

法定労働時間は、1日8時間、週40時間までが原則です。

しかし、法定労働時間には例外があります。それが、次にご紹介する「特例」です。

ポイント1.対象の事業者は法定労働時間の特例が認められる

特例の対象となる事業者は、法定労働時間の上限が週に44時間まで増えます。

 

対象となるのは、次の業種に当てはまる事業者です。

・商業(卸売業、小売業、理美容業、倉庫業など)
・映画・演劇業(映画制作の事業を除く)
・保健衛生業(病院、社会福祉施設、浴場業など)
・接客娯楽業(旅館、飲食店、ゴルフ場、公園・遊園地など)

なお、商業には、次のような業種も含まれます。

・駐車場業
・不動産管理業
・出版業(印刷部門を除く)

 

特例の対象となるのは、これらの業種に当てはまり、かつ従業員が10人未満の場合のみです。

従業員が10人未満というのは、企業全体の従業員数を指すわけではありません。支店や営業所、工場など、それぞれの場所で働く従業員の数を指します。

ただし、特例に当てはまるからといって1日8時間を超えて労働していいという意味ではありませんので、その点には注意が必要です。特例が認められる場合でも、1日当たりの上限は8時間です。

そう考えると、週に44時間の労働をする場合の休日は必然的に週1日となるでしょう。週に2日の休日があるにもかかわらず週に44時間の労働をしようとすれば、1日の労働時間が8時間を超えてしまいます。

44時間÷5日=8.8時間

 

反対に1日8時間以下で週44時間まで働けるのは、こんな働き方です。

・週1日は休日、あとの6日は7時間20分ずつ働く
・週に4日は8時間、あとの2日は6時間ずつ働く
・週に2日は8時間、あとの4日は7時間ずつ働く

なお、労働基準法では、最低でも「週に1日」あるいは「4週間に4日」は労働者に休日を与えるよう定めています(法定休日)。そのため法定労働時間が40時間の場合、1日の労働時間を8時間と定めれば必然的に休日は「週に2日」となるハズです。

従業員の勤務時間を決める際は、法定労働時間と法定休日を考慮して決めるよう心掛けてくださいね。

 

その2.労働時間(実働時間)には休憩を含まない

労働時間(実働時間)を計算する際には、休憩の時間を含みません。そのため労働時間は、別名を「実働時間」または「実労働時間」といいます。

例えば、勤務時間が9時~18時の場合、会社が従業員を拘束(こうそく)する時間は全部で9時間です。この時間を「拘束時間」や「所定労働時間」といいます。拘束時間から休憩時間を差し引いた時間が実際の労働時間、つまり「実働時間(実労働時間)」です。

勤務時間を決めるときは、この労働時間が法定労働時間を超えないように設定しなければいけません。

仮に労働時間を週40時間までに抑えなければいけない業種を想定した場合、例えばこんな働き方が考えられます。

・勤務時間:9時~18時(9時間) 休憩:1時間
・勤務時間:9時~19時(10時間) 休憩:2時間
・勤務時間:9時~20時(11時間) 休憩:3時間

いずれのパターンも、勤務時間から休憩時間を差し引くと労働時間は8時間です。

仮に勤務時間が10時間なのにもかかわらず休憩時間を1時間しか与えなければ、労働時間が8時間を超えてしまいます。その場合は残業代を支払う必要が出てくるため、注意しなければいけません。

休憩時間を与えるときの基本的なルールを知っておこう!

 

ポイント2.法定労働時間を超えたら時間外労働の割増賃金が発生する

従業員に法定労働時間を超えて労働させる場合には、割増賃金(わりましちんぎん)として残業代を支払わなければいけません。

割増賃金とは、その名の通り通常の賃金を割り増しすること。通常の賃金に対して、一定の割合で金額を上乗せするのです。

また、割増賃金には3つの種類があります。

 

それが、こちら。

  • 時間外労働
  • 休日労働
  • 深夜労働

 

このうち残業代に当たるのは、時間外労働の割増賃金です。時間外労働の割増率は、通常の賃金に対して2割5分以上(25%以上)と決まっています(※)。
※ひと月当たりの残業時間に応じて割増率が変動する。月45時間以内であれば割増率は25%

 

例えば、通常の賃金が時給1,000円だった場合、割増賃金の計算式は次の通りです。

1,000円×0.25=250円

従業員が1時間の残業をした場合、通常の賃金に250円を上乗せした金額(この場合は1,250円)を残業代として支払う必要があります。

ただし、労使協定(※)を結んでいない場合に時間外労働をさせるのは法律違反です。

 

※労使協定とは、労働者と使用者の間で結ぶ協定のこと。残業にまつわる労使協定を「三六協定(さぶろくきょうてい)」と呼ぶ
三六協定についてはこちらの記事を参考にしてください。

経営者なら知っておきたい36協定の基礎知識

従業員に時間外労働をさせる可能性がある場合には、事前に労使協定を結ばなければいけないことをぜひ覚えておいてくださいね。

 

まとめ

今日は会社の経営者が知っておくべき労働時間の基礎知識と、それぞれの項目で押さえるべきポイントをご紹介しました。

人を雇う以上、労働基準法を知らなかったでは済まされません。場合によっては刑罰を科される可能性もありますので、事前にしっかりと学んでおくことをオススメします。