退職金制度とは?概要や退職金の種類について解説

起業のための退職を検討し、退職時に支給される退職金を起業資金に充てようと考えている方もいるのではないでしょうか。当記事では、退職金について解説を行っています。退職金について、知識を深めたい方は、是非参考にしてください。

 

退職金とは

退職金とは、退職する従業員に対して支払われる金銭のことを指します。一般的には、定年退職時に支給されることが多くなっていますが、自己都合や懲戒解雇の場合でも支払うこともあり、企業ごとに制度が異なっています。

 

退職金制度は義務ではない

「入社してみたら、退職金がない会社だった」といった声を聞くことも多いですが、退職金の支給は企業の義務ではありません。そのため、退職金制度を設けるかどうかは企業の自由裁量に委ねられています。

あると思っていた退職金がないのであれば、肩透かしを食らったような気持ちになるでしょうが、法的には問題がないことになります。もちろん雇用契約書において、退職金を支給する旨の記載があるにも関わらず、支給されないのであれば大変な問題です。そのような場合には、労働基準監督署や弁護士などの専門家へ相談を検討しましょう。

 

就業規則との関係

就業規則には、始終業の時刻や賃金支払いの方法など、必ず記載を要する「絶対的必要記載事項」の他に、何らかの定めをした場合には記載が必要となる「相対的必要記載事項」が存在します。この相対的必要記載事項の中に退職金に関する事項があるため、退職金制度を設けた場合には、就業規則に記載することが必要です。

 

退職金の平均は?

厚生労働省の「令和3年賃金事情等総合調査」によれば、退職金の平均は次の通りとなっています。

  • 大学卒:約2,230万円
  • 高校卒:約2,020万円

 

ただし、この数字は、「資本金5億円以上かつ労働者1,000人以上の企業」を対象としたものです。中小企業の場合には、東京都産業労働局が、「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」におけるモデル退職金として、次のデータを提示しています。

  • 大学卒:約1,090万円
  • 高校卒:約990万円

 

企業規模によって、かなり開きがあることがわかります。しかし、いずれであっても、1,000万円、2,000万円と非常に大きな額となっており、退職金が従業員の大きな関心事となっているのも頷けるデータです。

また、企業規模だけでなく、業種別のデータも提示されているため、興味のある方は、確認してください。

参考:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」

https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/toukei/koyou/chingin/r4/

 

 

退職金の種類

退職金制度を設けるかは会社の自由であり、退職金自体にも複数の種類が存在します。主な退職金の種類としては「退職一時金」「確定給付企業年金」「企業型確定拠出年金」「退職金共済」の4つがあります。

また、退職金の受け取り方にも種類があり、全ての額を一括で受け取る「一時金」と分割して受け取る「年金」に大別可能です。

 

退職一時金

 

退職一時金は、退職時に一時金として企業から退職金を受け取ります。受け取る退職金の計算方法には種類があり、主な方法は次の通りです。

 

◆最終給与連動型

退職する時点での給与や手当の額(最終給与)に勤続年数などによって、定められた一定率を乗じて計算する方法です。

 

◆テーブル利用型

給与テーブルとは別に退職金計算用の退職金テーブルを設ける方法です。最終給与連動型と異なり、給与とは完全に切り離されているため、将来の退職金支給額をコントロールしやすくなっています。

 

◆勤続年数型

勤続年数ごとに支給額を定める方法です。退職時の役職や給与などによって変動することがなく、企業にとっても従業員にとっても将来の支給額が分かりやすくなっています。

 

◆ポイント型

勤続年数や役職などをポイント化し、退職時に累積したポイントに応じて退職金を決定する方法です。何をポイントとするかは企業の自由であり、退職金支給に際して多面的評価が可能となっています。

 

確定給付企業年金

確定給付企業年金は、あらかじめ将来受け取る退職金の額が決まっている制度です。支給形態としては、年金が基本となっています。企業が外部に掛金を拠出し、運用実績を問わず一定額が支給されることが特徴です。

確定給付企業年金には、「規約型」と「基金型」の2種類がありますが、基金型は加入人数の要件があったり、厚生労働大臣の認可が必要であったりとハードルが高くなっています。そのため、中小企業では規約型を採用することが多くなっています。

 

企業型確定拠出年金

企業型確定拠出年金においても、確定給付企業年金と同様に外部に掛金を拠出することになります。しかし、加入者が掛金の運用指図を行う点が大きな違いとなっており、支給される退職金額は運用結果次第です。

掛金は企業負担を基本としていますが、従業員が上乗せすることも可能です。また、支給形態は、確定給付企業年金と同様に年金が基本となっています。

 

退職金共済

退職金共済は、企業が加入している共済から退職金が支給される制度です。一時金として受け取るのが基本ですが、分割することも可能となっています。主に企業内に退職金制度がない中小企業が利用しており、以下の3種類が存在します。

 

◆中小企業退職金共済

独立行政法人勤労者退職金共済機構が中小企業を対象として実施している退職金共済です。中小企業のみが対象となっており、掛金は国から補助を受けることも可能です。

 

◆特定業種退職金共済制度

建設業など特定の業種を対象とした退職金共済です。企業の退職金というより、退職者が属する業種からの退職金といった側面が強くなっています。

 

◆特定退職金共済

商工会議所や商工連合会、商工会などの特定退職金共済団体が、共済契約を締結した加入企業に代わって退職金の支給を行います。

 

 

まとめ

少子高齢化により、労働力人口の減少が続く日本では、事業活動の担い手となる従業員の確保も難しくなっています。そのため、求職者にとって魅力的な労働条件を提示することは、労働力の確保において、非常に重要です。

退職金制度を設けている企業は、そうでない企業よりも求職者にとって魅力的に映ります。自社において、退職金制度を設けることが難しい企業であっても、中小企業退職金共済などを利用すれば、少ない負担で制度運用が可能です。

これから起業を考えている方や、従業員の雇い入れを考えている方は、是非当記事を参考にして、退職金制度の導入を検討してください。