創業時には、資本金の預け入れや、振込みなどのために金融機関に口座を開く必要が生じます。とくに、制度融資を申し込む場合には、どこの金融機関を選ぶかにより少なくない影響がでるため、その選択は慎重に行う必要があります。もし、融資に積極的でない金融機関を選んでしまうと、「十分なサポートをうけられなかった」や「役立つ提案がされなかった」などとなる可能性もあります。この記事では、「創業者はどんな金融機関を選べばよいのか?」や「金融機関ごとの特徴や違い」について解説します。
なぜ、金融機関選びが重要なの?
通常、新たに事業を始めるときには、元手の資金や出資金を新たな口座に移してから営業を開始します。
中には、個人口座をそのまま利用して事業を始める方もいますが、それだと個人のお金と事業用のお金の区別がつきにくくなるため、通常はそれぞれで通帳を分けるのが一般的です。
しかし、金融機関ごとに次のような特徴があるため、口座を作るときにはこれをよく考えて作ることをおすすめします。
規模の大きな金融機関(都市銀行など)の場合
<メリット>
店舗数が多いため、資金の出し入れや振り込みなどをするときに便利です。また、預金の引き出しや振り込みをする場合には、同じ金融機関の支店を利用すれば手数料の節約ともなります。金融関連のメニューも多いため、自分にあった商品を選びやすく、他の金融機関に統合されにくいというのも強みといえます。
<デメリット>
規模の大きな金融機関は、比較的、中〜大規模の企業をターゲットとしているため、創業者や零細・小企業などに対して親身なサービスを行っているところが少ないといえます。また、これらの企業からの融資の受付についても、積極的でないところが少なくありません。
規模の小さな金融機関(地方銀行、信用金庫など)の場合
<メリット>
規模の小さな金融機関では、比較的、相談などにも親身に応じてもらいやすい傾向があります。融資についても、少額の資金から対応しており、創業者にあったサポートを受けやすいといえるでしょう。
<デメリット>
店舗数が少ないため、資金の出し入れや振り込みなどのときに不便さ感じることも少なくありません。また、取り扱っている金融商品の数も多くないため、希望するものを選べないこともあります。また、大きな金額の融資は難しい場合があります。
なお、日本政策金融公庫は、融資は行っていますが、預金業務や通帳の発行業務は行っていません。そのため、公庫で融資を受けた場合の引き落し口座については、他の金融機関のものを使用することとなります。
制度融資を利用する場合の金融機関の選び方
「制度融資」とは、都道府県や市町村などの自治体、国の保証機関である信用保証協会、市中の金融機関の3者が一体となって、創業者や中小企業が融資を借りやすくするための仕組みをいい、いわば、融資のパッケージ商品といえます。
具体的には、自治体が制度の設計や運用を行い、信用保証協会は借入人の公的な保証人となり、金融機関が融資の際の資金を提供する役割となっています。
制度融資を利用する場合には、必ずどこかの金融機関から申込みをする必要があるため、もし、審査の結果、融資がでることとなった場合には、その後はその金融機関で口座を作り、それを経由して返済をしていくこととなります。
つまり、制度融資の場合には,融資を申し込んだ金融機関がメインの金融機関になるということとなります。預金の受け入れや振り込みのための口座であれば、気軽にいくつでも作ることができますが、制度融資を利用する場合には、「申し込んで融資を受けた金融機関」=「その後のメインバンク」となるため、金融機関選びは慎重に行う必要があります。
創業者が選ぶべき金融機関は「信用金庫」がおすすめ!
金融機関では、融資に対してすべて同じような取り組みをしているわけではありません。金融機関の種類や支店の状況などにより、創業融資への取り組み方には大きな違いがあります。
例えば、都市銀行ではあまり創業融資に力を入れていないのが普通です。
これは、そもそも都市銀行は、ある程度の資産を持った方をメインの顧客としているということにその理由があります。なので、創業者のようなまだ取引実績のない企業については、取引を敬遠する傾向にあります。
地方銀行については、都市銀行と信用金庫の中間の対応といえますが、比較的、規模の大きなところは都市銀行に近いといえます。
一方、信用金庫では、地域内の零細・中小企業者をメインの取引対象としているため、創業融資についても積極的かつ 丁寧な対応をするところが多いといえます。
信用組合は、地域内の零細・中小企業者を取引対象としている点では信用金庫と同じといえますが、信用金庫よりも規模が小さいところが多く、そのため大きな金額の融資に対応してもらいにくいという点があります。
以上のことから、創業者が融資を受けることを考えるのであれば、はじめての取引をする金融機関としては、「信用金庫」が最も適しているといえます。
金融機関ごとの創業融資への対応
種別 | 規模 | 適正 | 備考 |
都市銀行 | 大 | △ | 創業者をターゲットとしていない |
地方銀行 | 中 | ◯ | 都市銀行と信用金庫の中間。やや創業融資に力を入れている |
信用金庫 | 小 | ◎ | 創業融資に力を入れている |
信用組合 | 小 | ◯ | 創業融資に力を入れているが、資金力にやや問題あるため大きな額の融資を受けにくい |
まとめ
創業者が事業を開始する場合には、それまで個人口座に入っていた資金を、事業用の資金として切り分ける必要があります。この時に、預金や振り込みなどの利便性だけを考えるのであれば、規模の大きな金融機関が有利といえます。しかし、創業時に融資を受ける予定がある場合には、大手の金融機関では親身な対応を期待できないことが少なくないため、この点を重視するのであれば信用金庫クラスの金融機関を選ぶことをおすすめします。