個人のインフルエンサーにSNS上で自社商品やサービスのPRする投稿をしてもらうインフルエンサーマーケティングの対価として報酬を支払った場合、この報酬は源泉徴収の対象となるのでしょうか?
今回は個人のインフルエンサーに報酬を支払ったときの源泉徴収について解説します。
インフルエンサーとは?
インフルエンサーとは、SNS上で多数のフォロワーを持ち、一般消費者などに多くの影響を与えることができる者のことをいいます。このインフルエンサーの持つ影響力を使って、自社商品やサービスのPRを行うことをインフルエンサーマーケティングといいます。
個人で活動しているインフルエンサーも多いため、企業が個人のインフルエンサーに支払う報酬について源泉徴収が必要かどうか、という問題が生じます。
源泉徴収の対象となる報酬とは?
事業者が、日本の居住者である個人に、一定の報酬等を支払う場合には、支払の都度、所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません。
源泉徴収の対象となる一定の報酬は次のように定められています。
①原稿料 、講演料、デザインに対する報酬など
②弁護士、公認会計士等に支払う報酬・料金
③社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
④プロ野球選手、外交員、 モデルなどに支払う報酬・料金
⑤テレビやラジオ等の出演料等の報酬・料金
⑥芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
⑦ホステス等に支払う報酬・料金
⑧広告宣伝のための賞金
⑨馬主に支払う競馬の賞金
⑩役務提供を約することにより一時に支払う契約金
個人に対してこれらの報酬を支払った場合は源泉徴収が必要となります。
インフルエンサーに報酬を支払ったときの源泉徴収
では、インフルエンサーに報酬を支払ったとき、源泉徴収は必要となるのでしょうか?
個人のインフルエンサーに、自身の持つSNS上で自社商品やサービスをPRする投稿をしてもらうために支払った報酬が、先ほど説明した一定の報酬にあたるかどうかを検討しなければなりません。
該当する可能性がありそうなものとしては、「①原稿料」「④モデルに対する報酬」「⑧広告宣伝のための賞金」が挙げられます。それぞれについて検討してみましょう。
「①原稿料」に該当するかどうか
インフルエンサーの持つSNS上で自社商品やサービスのPRをする投稿をしてしてもらった対価として支払う報酬は、「原稿の対価」とは異なるため、原稿料とはいえません。
「④モデルに対する報酬」に該当するかどうか
源泉徴収が必要となる「モデル」とは、雑誌、広告その他の印刷物にその容姿を掲載させて報酬を受ける者のことをいいます(所得税法施行令 第320条③)。
そのため「モデルに対する報酬」には該当しません。仮にSNSの投稿に、PRする商品と合わせて、インフルエンサー自身が入った写真が掲載されているような場合でも、「印刷物」に掲載されていなければ、源泉徴収の対象とはなりません。
「⑧広告宣伝のための賞金」に該当するかどうか
「広告宣伝のための賞金」とは、事業の広告宣伝のために賞として支払う金品その他の経済上の利益をいいます(所得税法施行令 第320条⑦)。
インフルエンサーに対する上記報酬の支払いは賞として支払うものではないため、「広告宣伝のための賞金」には該当しないこととなります。
以上より、源泉徴収が必要な報酬で挙げられているどの項目にも該当しません。そのため、インフルエンサーにSNS上で自社商品やサービスのPRをしてもらった対価として支払う報酬については、原則として源泉徴収をする必要はないこととなります。
なお、インフルエンサーに対する報酬が源泉徴収の対象となるかどうかは、依頼した業務の実態に即して判断する必要があります。例えば、インフルエンサーに自社商品のデザインを依頼し報酬を支払った場合には「①デザインに対する報酬」に該当し、源泉徴収が必要となります。依頼した業務によっては源泉徴収の対象となる点に注意してください。
まとめ
個人のインフルエンサーに報酬を支払ったときの源泉徴収について解説しました。いわゆるインフルエンサーマーケティングの対価として支払った場合は原則として源泉徴収の必要はありませんが、依頼する業務によっては必要となることがありますから注意してください。