事業を行っていると郵便切手を購入したり、使用したりすることも多いでしょう。今回は郵便切手にかかる消費税の取扱いやインボイス制度に対応するための注意点などについて解説します。
郵便切手の購入は非課税取引だが、使用すると課税取引となる
日本国内で行われる資産の譲渡等のうち、郵便局等が行う郵便切手や郵便葉書等の譲渡については、「非課税取引(消費税が課されない取引)」とされており、郵便局で郵便切手や郵便葉書等を購入した段階では課税仕入れには該当しません。(消費税法第6条第1項、別表第二四イ)
一方で、郵便物の配達料金は「課税取引」です。郵便物を郵便ポストに投函する場合は、郵便切手を貼り付けして配達料金を支払うため、ポストに投函した時点で課税仕入れとなります。
このように郵便切手に関する消費税は2段階に分かれています。
郵便切手の購入や使用に関する会計処理
先ほど説明したように、郵便切手等に関する消費税は、原則として購入時「非課税」、使用時「課税」となります。このため、原則として、会計処理も郵便切手等の購入時と使用時の2回に分けて行うこととなります。ただし、簡便的な方法も認められています。
<原則的な会計処理>
①購入時(現金で84円切手を購入)
借方 | 貸方 |
(貯蔵品) 84 | (現金) 84 |
②使用時(84円切手を貼り付けした郵便物を郵便ポストに投函)
借方 | 貸方 |
(通信費) 77 | (貯蔵品) 84 |
(仮払消費税) 7 |
しかし、購入時と使用時の2回に分けて会計処理をするのも大変煩雑です。
そのため、継続して同じ処理を行うことを条件として、郵便切手等の購入時に費用計上し、仕入税額控除をすることが認められています(消費税法基本通達11-3-7)。
この場合の仕訳は次のようになります。
<例外的な会計処理>
借方 | 貸方 |
(通信費) 77 | (貯蔵品) 84 |
(仮払消費税) 7 |
原則的な会計処理の購入時の貯蔵品処理をせずに、費用計上することができます。
なお、郵便切手や郵便葉書等をチケットショップで購入した場合は、購入した時点で「課税取引」となります。「非課税取引」となるのは、郵便局等で購入した場合に限られますから注意してください。
インボイス制度導入後はどうなる?
インボイス制度導入後、仕入税額控除を行うためには原則としてインボイスの保存が必要となります。しかし、郵便局等で郵便切手を購入した場合はする郵便切手は「非課税取引」であり、インボイスが交付されません。では、どのようにインボイス対応すればよいのでしょうか?
郵便局で郵便切手を購入し、切手を貼り付けした郵便物を郵便ポストに投函したとき
郵便局等における郵便切手の購入は非課税取引ですから、郵便局の窓口などで切手を購入した際に交付される領収書には消費税率および消費税額が記載されておらず、インボイスではありません。
この場合、帳簿に一定の事項を記載することで、仕入税額控除をすることができます。総勘定元帳の摘要欄に「郵便切手特例」等と記載しておくことが考えられます。
費用計上及び仕入税額控除のタイミングは従来どおりで問題ありません。原則的な方法(使用時)と例外的な方法(購入時)の両方が認められています。
なお、郵便局で郵便切手を購入したときに交付される領収書はインボイスではありませんが、法人税や所得税の計算でも必要となりますから、保存しておきましょう。
郵便局窓口で発送した場合は簡易インボイスが交付される
郵便局等の窓口で郵便物を発送し、料金を支払った場合は、その時点で課税取引となります。そのため、交付される領収書には消費税率や消費税額が記載された簡易インボイス(領収書)となっています。仕入税額控除をするにはこの簡易インボイスを保存しておく必要があります。
まとめ
郵便切手の購入や使用に係る消費税やインボイス対応について解説しました。郵便局等で切手を購入し郵便物をポストに投函した場合はインボイスは不要だが帳簿に追加記載が必要、郵便局等で郵便物を直接差し出したときは簡易インボイスの保存が必要、と郵便物の送付方法によって取扱いが異なります。正しく処理するためにも、考え方をしっかりと理解しておきましょう。