取得価額が10万円以上のパソコン・サーバー・ソフトウェアを購入した場合、原則として減価償却を行う必要があります。今回は、パソコン・サーバー・ソフトウェアを購入したときの会計処理、勘定科目や耐用年数、注意点、様々な特例などについて解説します。
10万円以上のパソコン・サーバー・ソフトウェアは原則、減価償却が必要
建物や機械、車両、ソフトウェアなどで、取得価額が10万円以上で、一年以上にわたって使用可能な資産のことを「固定資産」といいます。この固定資産の購入費用も事業に要したものですから、必要経費にはなります。しかし、購入した年に全額が経費になる訳ではありません。減価償却(げんかしょうきゃく)を行い、その固定資産の種類ごとに決められた年数(法定耐用年数)で、分割して経費計上することができます。
パソコン・サーバー・ソフトウェアは、通常一年以上にわたって使用可能なものですから、取得価額が10万円以上のときは原則として「固定資産」に該当し、10万円未満のときは「消耗品費」として、全額を費用計上することができます。
ただし、固定資産に該当する場合も、取得価額によって異なる処理方法が認められています。
減価償却について詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。
減価償却をわかりやすく解説!使い方次第で大幅に節税も可能に!
資産の取得価額ごとの会計処理方法
では、取得価額ことに選択できる処理方法を見ていきましょう。
取得価額が10万円以上20万円未満の場合
次の3つの方法から選ぶことができます。
①原則的な処理(通常の減価償却)
固定資産計上し、決められた方法と耐用年数で減価償却をします。
②一括償却
取得価額が10万円以上20万円未満のものは、一括償却資産として一括償却をすることができます。一括償却とは、個別に減価償却を行うのではなく、その事業年度中に取得した対象資産をまとめて、資産の種類や取得した月に関係なく3年間で均等償却する方法です。
例えば、3月決算法人で、6月に15万円、8月に18万円、2月に12万円の資産を取得し、一括償却をする場合、これらの資産に関する取得した事業年度の減価償却費は(15万円+18万円+12万円)÷3=15万円となります。
③即時償却(少額減価償却資産の特例)
一定の中小企業者等の場合は、取得価額が30万円未満の少額資産について、年間300万円を限度として、購入時(事業の用に供した時)に費用処理することが認められています。
取得価額が20万円以上30万円未満の場合
一定の要件を満たす場合は、次の2つの方法から選ぶことができます。
①原則的な処理(通常の減価償却)
固定資産計上し、決められた方法と耐用年数で減価償却をします。
②即時償却(少額減価償却資産の特例)
一定の中小事業者等の場合は、取得価額が30万円未満の少額資産について、年間300万円を限度として、購入時(事業の用に供した時)に費用処理することが認められています。
なお、取得価額が30万円以上の場合には、原則的な処理しか認められていません。
パソコン・サーバー・ソフトウェアの減価償却方法、勘定科目、法定耐用年数は?
減価償却をする場合の、主な減価償却の方法には、①毎年、一定額の減価償却費を計上する「定額法」と②毎年、一定の率で減価償却費を計算する「定率法」、③使用量に応じて減価償却費を計上する「生産高比例法」などがあります。
通常、パソコンやサーバーは「工具器具備品」の勘定科目に計上し「定率法」を使って減価償却、ソフトウェアは「ソフトウェア」の勘定科目に計上し「定額法」を使って、減価償却を行います。
勘定科目 | 減価償却方法 | 法定耐用年数 | |
パソコン | 工具器具備品 | 定率法 | 4年 |
サーバー | 工具器具備品 | 定率法 | 5年 |
ソフトウェア | ソフトウェア | 定額法 | 5年 |
仕訳例は次のようになります。
3月決算法人が、10月に40万円のサーバーを現金で取得し、事業の用に供した場合(定率法 5年で減価償却)
【取得時】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
工具器具備品 |
400,000 |
現金 |
400,000 |
【決算時(1年目)】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
減価償却費(※) |
80,000 |
工具器具備品 |
80,000 |
※400,000円×0.4(定率法、耐用年数5年の償却率)×6ヶ月/12ヶ月
【決算時(2年目)】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
減価償却費(※) |
128,000 |
工具器具備品 |
128,000 |
※(400,000円-前年までの償却費の合計80,000円)×0.4(定率法、耐用年数5年の償却率)×12ヶ月/12ヶ月
【決算時(3年目)】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
減価償却費(※) |
76,800 |
工具器具備品 |
76,800 |
※(400,000円-前年までの償却費の合計(80,000円+128,000円))×0.4(定率法、耐用年数5年の償却率)×12ヶ月/12ヶ月
【決算時(4年目)】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
減価償却費(※) |
46,080 |
工具器具備品 |
46,080 |
※(400,000円-前年までの償却費の合計(80,000円+128,000円+76,800円))×0.4(定率法、耐用年数5年の償却率)×12ヶ月/12ヶ月
【決算時(5年目)】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
減価償却費(※) |
34,560 |
工具器具備品 |
34,560 |
※改定取得価額(400,000円-前年までの償却費の合計(80,000円+128,000円+76,800円+46,080円))×0.5(定率法、耐用年数5年の改定償却率)×12ヶ月/12ヶ月
【決算時(6年目)】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
減価償却費(※) |
34,559 |
工具器具備品 |
34,559 |
※期首帳簿価額-1円<改定取得価額(400,000円-(80,000円+128,000円+76,800円+46,080円))×0.5(定率法、耐用年数5年の改定償却率)×12ヶ月/12ヶ月
3月決算法人が、10月に60万円のソフトウェアを現金で取得し、事業の用に供した場合(定額法 5年で減価償却)
【取得時】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
ソフトウェア |
600,000 |
現金 |
600,000 |
【決算時(1年目)】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
減価償却費(※) |
60,000 |
ソフトウェア |
60,000 |
※600,000円×0.2(定額法、耐用年数5年の償却率)×6ヶ月/12ヶ月
【決算時(2年目~5年目)】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
減価償却費(※) |
120,000 |
ソフトウェア |
120,000 |
※600,000円×0.2(定額法、耐用年数5年の償却率)×12ヶ月/12ヶ月
【決算時(6年目)】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
減価償却費(※) |
60,000 |
ソフトウェア |
60,000 |
※600,000円×0.2(定額法、耐用年数5年の償却率)×6ヶ月/12ヶ月
パソコン、サーバー、ソフトウェアを減価償却するときの注意点
注意点その1:金額は「一体として機能するか単位」で判定する
これまで説明したとおり、取得価額によって処理方法が変わります。このときの取得価額は、一体として機能する単位で判定します。
例えば、9万円のパソコンと2万円のプリンタを同時に購入した場合であっても、パソコンとプリンタはそれぞれ別の機能を持つため、一体ではなく別々のものとして判定します。この場合は、どちらも10万円未満となるため、消耗品として処理することができます。
また、9万円のパソコンを5台まとめて45万円で購入した場合も、パソコンは通常1台ごとに使うことができるものですから、1台あたりの金額で判定し、すべてを消耗品として処理することができます。
注意点その2:原則として償却資産税の申告対象となる
取得価額が10万円以上のパソコン・サーバーは原則として、償却資産税の申告対象となります。ただし、一括償却資産として処理した場合は償却資産税の申告対象とはなりません。資産の処理方法によって、償却資産税の取扱いが異なることを知っておきましょう。
なお、ソフトウェアは償却資産税の対象とはなりません。
注意点その3:中小企業投資促進税制が使える可能性がある
一定のソフトウェア等の取得については、中小企業投資促進税制の対象となり、特別償却や税額控除といった特典を受けることができる可能性があります。
まとめ
パソコン・サーバー・ソフトウェアを購入したときの会計処理、勘定科目や耐用年数、注意点、様々な特例などについて解説しました。会計処理の方法や特例を適用するかどうかによって節税できるかどうかが変わってきます。いろいろなパターンがありますが、しっかりと制度を理解し、節税を図りましょう。