会社を設立したら、毎年、決算を行い、決算書を作成しなければなりません。決算書とはどんなものなのでしょうか?なぜ必要なのでしょうか?今回は決算書についてわかりやすく解説します。
決算書とは?
決算書とは、会社の一年間の業績や財政状態などをまとめた報告書のことをいい、「財務諸表」や「計算書類」とも言われます。どんな会社でも、必ず、年一回は決算をして、決算書を作成しなければなりません。
一言で決算書といっても、いくつかの種類の報告書があり、主なものには次のようなものがあります。
決算書の種類
①貸借対照表
②損益計算書
③株主資本等変動計算書
④キャッシュ・フロー計算書
決算書はなぜ作成が必要なの?作成する目的
①株主への報告のため
会社法の規定で、すべての会社は、一年ごとに決算書(会社法上は計算書類と呼ばれる)を作成し、株主に対して一年間の業績を報告する必要があります。
株主は会社に出資してくれています(お金を出してくれています)。お金を出してくれている人に対しては、当然、どのように経営して、どのような成果があったかを報告しなければなりません。
②税金計算のため
会社に利益が出たらそれに対して法人税等がかかることとなります。必ず年一回は、決算書をもとに税金を計算し、申告と納税をしなければなりません。
③金融機関への報告のため
金融機関からお金を借りている場合は、金融機関に決算書を提出し、会社の状況を報告する必要があります。これからお金を借りる場合は、必ず決算書の提出が求められます。
金融機関は決算書で会社の状況を確認して、融資先が大丈夫か、追加の融資ができるかどうかを審査します。
④経営に役立てるため
決算書は、会社の一年間の活動を数値に落とし込んだもので、「会社の通信簿である」とも言われます。会社の財産や負債の状態はどうなっているか、利益がどれくらい出ているか、資金繰りの状態はどうか、など損益と財産の状況が明確に把握されることで、会社の現状や課題が見えてくることになり、経営に役立てることができます。
そもそも決算では何をするの?
決算書は株主や金融機関にも報告するものですし、決算書を基に税金の申告をすることともなります。そのため、間違いのないものにしなければなりません。決算を間違って税金の申告をしてしまうと、後で修正申告が必要となることもあります。
決算で実施する主な手続きとしては、次のような事項が挙げられます。
①一年間の帳簿をチェックして間違いがないかどうかを確認する
一年間の帳簿をチェックして、間違いがないことを確認します。売上や仕入、経費の計上漏れがないことも確認します。
②残高が正しくなるようにチェックする
主に貸借対照表に計上される科目を中心として、残高が正しいことをチェックします。必要に応じて、金融機関や取引先から残高証明書を入手します。
③在庫棚卸をする
在庫を持つ会社では、決算時点の在庫残高を把握するために、在庫棚卸を行います。
④減価償却費、引当金などを計上するなど決算特有の会計処理を入れる
固定資産の減価償却費の計上や貸倒引当金など各種引当金の計上など決算特有の会計処理を行います。
⑤税金を計算する
税引前当期純利益が確定したら、税金を計算し、税金を計上する仕訳を入れます。
決算書の種類
決算書には次のようなものがあります。
貸借対照表
貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)とは、決算日時点の財政状態を表す報告書のことで、「バランスシート」ともいいます。バランスシートを略して「B/S(ビーエス)」と呼ばれることが多いので「B/S(ビーエス)」と覚えておきましょう。
貸借対照表を見れば、その会社の決算日時点の、現金や預金、売掛金、固定資産などの資産がいくらあるか、買掛金や借入金などの負債がいくらあるか、資本がいくらあるか、ということがわかります。
損益計算書
損益計算書(そんえきけいさんしょ)とは、決算日までの一年間の経営成績を表す報告書のことで、「ピーエル(P/L)」とも呼ばれます。
例えば、3月決算の会社の場合には、4月1日から3月31日までの一年間の売上がいくらあったか、仕入がいくらあったか、経費がいくらあったか、それによって利益はどれくらい出たか、ということを表にします。税金を差し引いた最終的な利益を「当期純利益」といい、その一年間でいくら儲かったか、がわかります。
株主資本等変動計算書
株主資本等変動計算書とは、貸借対照表の純資産の一年間の増減について、要因別に明らかにしたものです。純資産とは、株主が払い込んだ資本金や過去の利益の留保など返済する必要のない資金源泉のことをで、自己資本とも言います。株主資本等変動計算書を見ることによって、増資で純資産が増えたのか、利益の獲得により純資産が増えたのか、配当や自己株式の取得で純資産が減少したのか、などがわかります。
キャッシュ・フロー計算書
キャッシュ・フロー計算書とは、決算日までの一年間のキャッシュ(現金や預金)の動きを表す報告書のことをいいます。
損益計算書を見れば、一年間でどれくらいの利益が出たかがわかりますが、キャッシュ・フロー計算書は、利益ではなく、「キャッシュ」が増えたか、減ったかということを表します。会社のキャッシュが増えていても、それが借入によって増えているのか、儲かって増えているのかで全く会社の見方は変わりますよね。
キャッシュ・フロー計算書は「営業活動」「投資活動」「財務活動」に区分し、それぞれの活動ごとにキャッシュの増減を表します。これによって会社が営業活動でどのくらいのキャッシュを獲得し、その資金をどのように使ったのかを読み取ることができます。
キャッシュ・フロー計算書は、中小企業では必ず作成しないといけないものではありません。しかし、キャッシュの動きを把握することは会社にとって重要であるため、多くの会社で作成しています。
決算書を見るときのポイント
決算書を見て一年間を振り返ることはとても大切なことですが、もっと経営に活用することもできます。
例えば、過去数期間の決算書を時系列で並べて比較してみると、時系列で会社の状態の推移がわかります。売上や経費が大きく増減しているのであればその原因を考えてみましょう。
売上の伸びに比べて人件費の伸びの方が大きければ、それで大丈夫か、考える必要があります。
また、自社の経営指標と同業他社の経営指標を比較すれば、同業他社と比べて自社がどのような状態にあるかどうかがわかるのです。
まとめ
決算書についてわかりやすく解説しました。ここで解説したことは、株主や金融機関と話をする際に必ずわかっていないといけないことばかりです。「ビーエス」「ピーエル」という言葉が出てきて、経営者が何のことかわからずポカンとしていたら、金融機関もお金を貸してくれなくなるかもしれません。会社を設立したら、決算書の基本的な事項については必ず理解しておきましょう。