住民税の特別徴収とは?2024年6月開始の定額減税についても紹介します

経理担当者の主な業務の1つに給与計算があります。給与計算では税金に関する処理が必要であり、住民税もその1つです。住民税は前年の所得に応じて決まるもので、毎年5月下旬に天引きすべき税額の通知書が自治体から会社に届きます。現在はちょうど通知書が届く時期であり、住民税に関する実務いついて再確認したい方もいるのではないでしょうか。

この記事では、住民税の概要や金額の決まり方、給与担当者が押さえておきたい処理の方法を紹介します。加えて、2024年6月から始まる定額減税についても解説します。住民税について再確認し、ぜひ給与計算の業務に活かしてください。

住民税とは

住民税とは、身近な行政サービスを受けるために負担すべき税金(地方税)の1つです。住民税には、個人が負担する「個人住民税」と法人が負担する「法人住民税」があります。個人住民税には「市町村民税」と「道府県民税」の2種類が含まれています。会社に勤めている場合は源泉徴収され、会社によって納付されることが一般的です。

 

住民税額の決まり方

個人が収めるべき住民税は、所得に税率を掛けて算出される「所得割」と、所得に関係なく全員が一定額を納める「均等割」の合計で計算されます。

住民税の金額は、個人が受け取った収入から必要経費や法的控除額などをマイナスして計算される個人の所得をもとに決まります。所得割の金額は、所得に税率10%を掛けることで計算されます。均等割は5000円とされていますが、実際の課税では都道府県や市町村の判断によって定められた税率で計算されています。

 

なお、地方自治体によって計算された住民税の通知書が届くため、個人や給与担当者が住民税の金額を計算する必要はありません。

 

普通徴収と特別徴収

住民税の徴収方法には、各個人が納付する「普通徴収」と、会社が源泉徴収を行い納付する「特別徴収」があります。

給与所得者の住民税は、会社による天引きである特別徴収が義務付けられています。5月下旬に会社宛てに届く「市民税・県民税特別徴収税額の決定・変更通知書(納付義務者用)」をもとに、6月支払の給与から天引きし、翌月10日までに会社が納付しなければなりません。公的年金受給者も、公的年金の支払時に住民税が天引きされます。

自営業者の場合は普通徴収となり、6月頃に個人へ届く「住民税納税通知書(納付書)」で納付します。6月・8月・10月・翌年1月の4回の期限が設けられており、それぞれの納付書に記載された金額を納付しなければなりません。

 

住民税について給与計算担当者が行う業務

給与計算担当者が行わなければならない住民税に関する主な処理は、従業員に支払う給与から住民税を天引きすることと、その金額を地方自治体に納付することです。それぞれの処理について、詳しく見ていきましょう。

特別徴収税額の把握・天引き

「市民税・県民税特別徴収税額の決定・変更通知書(納付義務者用)」が届く際には、従業員用の「住民税決定通知書」も同封されています。従業員が自分の住民税を確認するものであるため、それぞれに渡しましょう。新たに届いた通知書の金額は、6月に支払う給与から天引きを開始します。

なお、それぞれの従業員に渡す通知書は、書面でなく電子データ形式での受け取りを選択できる地方自治体もあります。

地方自治体への納付

天引きした住民税は、翌月10日までに納付しなければなりません。納付先は従業員の住所のある市町村です。納付の方法は、書面の通知書に同封された納入書、eLTAXの地方税共通納入システム、インターネットバンキングなどがあります。

なお、書面の納入書には、発行時点の納付額が記載されています。ただし、従業員の転居や退職により金額が変動することもあるため、納付額が正しいかどうか毎回確認しなければなりません。

 

 

2024年6月開始の定額減税とは

定額減税の対象は所得税と住民税であり、給与計算担当者が処理をする必要があります。住民税に関しては、以下のように対応しなければなりません。

 

・6月徴収の住民税は0円

・7月~翌年5月までは以下の金額を11分の1ずつ源泉徴収

所得割-定額減税額(10,000円)+均等割+森林環境税(1,000円)

 

住民税における定額減税の対象は、所得割のみです。均等割は納付する必要があり、2024年から新たに課税される「森林環境税」が加わるため、住民税がまったくのゼロになるわけではない点に注意しましょう。詳しい処理の方法は、国税庁の特設サイトを参照してください。

参考:定額減税 特設サイト|国税庁

 

まとめ

従業員に課せられる住民税は、会社が毎月源泉徴収を行い、期日までに納付する必要があります。また、2024年6月には新たに定額減税に関する処理もしなければなりません。給与計算では住民税のほかにも源泉徴収すべき税金や保険料があるため、それぞれについての対応を理解して正確に処理する必要があります。住民税の通知書が届くこの時期に、改めて住民税の処理方法を確認してみてはいかがでしょうか。