今回は飲食店で起業するにあたって、見落としがちなことを大きく5つに分けてご紹介し、これから開業する予定の方に役立てていただければと思っています。
これから取り上げるポイントは、飲食店経営コンサルタントである私が独立開業して感じたこと、また、多くの経営相談を受けてきた中で、もっとも多い事例をまとめています。
1. 収益予測が当たらない!
開業準備の段階で、融資などを含めて資金計画をする際、多くの経営者は資金がショートし経営が立ちいかなることを恐れて、控えめの売上予測を立てて計算します。
しかし、大半の人が実際開業すると予想以上に売上が少なく、運転資金の底が見えてしまう状況になるようです。
この原因は、大きく分けて2点あります。
1つ目は、友人知人の来店をあてにしており、それが長く続くであろうと計算してしまうことです。
どんなに仲間が多い経営者でも、友人・知人は有限なのです。
カウンター5席程度の飲食店であれば、その方達だけでも成立するかもしれませんが、ある程度の規模をもって開業するのであれば、友人・知人はいないものとして、収支の予測を立てるべきです。
2つ目は、いつの間にか売上予測が高くなってしまうことです。
この主たる原因は、開業時のモチベーションの高さから感傷的になり、ロマンチックに成功ストーリーを作ってしまうことにあるようです。
理論的な話ではありませんが、コンサルタントをする上で一番私が注意を払うところでもあります。全ての事業計画を作ったあとに今一度、「本当にこんなにうまくいくのか?」と立ち返ることが必要とされます。
この作業は客観性が重要なことから、できれば第三者にチェックしてもらうことが望ましいです。
会計士、税理士、コンサルタントなどにスポットでもいいので、アドバイスを求めると良いでしょう。
2. 開業資金が足りない!
これまで私自身、50店舗以上の開業に携わっていますが、開店準備に入る際に用意した資金が、予定通り予算内に収まった事例を一度も見たことがありません。
多くは、購入品リストを作る段階で細かい消耗品を見落としていることが原因ですが、とても綿密に計画を立てる経営者でも、一つ一つの備品を購入する際に少し良いものを選んいき、それが積もり積もって大きな予算オーバーとなるようです。
開業1ヶ月前からは寝るヒマもないほどの忙しさになると思います。
ここは普段から、お店のオペレーションを常に想像して、必要なものをしっかり把握することと綿密に計算した開業資金に3割程度上乗せした金額で想定しておくことが賢明です。
3. 支出はいつの間にか増えていく!
当たり前のことですが、開業時は飲食店向けのサービスを提供する会社の営業マンが最も多くアプローチしてくる時期です。
オープンの日までに、必要な物品や契約がたくさんありますが多忙なことから、よく比較検討をせずにとにかく間に合わせるために購入、契約をしてしまうケースがあります。
これにより、必要経費である支出が膨らんでいってしまうのです。
開業当初はあまり時間が取れないことを十分考慮に入れて、前もって検討することをお勧めします。
4. 経営悪化に気づかない!
経費の支払いにおいて、毎日の現金払いでの仕入れや購入ならば、そんなに問題はありませんが特に月度締めで翌月払いの支払いやクレジットカードでの決済が多い店舗では、実際に現金が減るタイミングが1ヶ月以上先になり、経営状態が悪くなっていることに気づかないことが多くあります。
特に経営の実務経験が少ない方は、このキャッシュフローの動きを掴むのに時間を要する傾向にあります。
どんなに小規模の店舗経営でも、キャッシュフローを明確にするために日々の経理をすすめて、常に把握することが大事でしょう。
事前に専門家に相談し、毎月何日の時点で、現金残高がいくらになったらアラートとなるのかを最低でも把握するべきです。
5. 開業当初、人は必ず余る!
そもそも経営者ひとりで運営する店舗では心配ありませんが、開業の際は人員を募集すると、とても反応がよく、思ったより応募者が多いことがあります。
この流れで、人が足りなくなることを恐れて、人員を多めに採用する方が少なくありません。
しかし、多くの店舗が開業1ヶ月程度で一度は来客数が落ち着き、人が余ってしまう状況になります。
そうなると、アルバイトの場合は勤務時間を削ることになり、正社員で固めてしまった店舗は、最悪の場合、解雇を検討することとなります。
開業早々の人件費削減は、お店全体のモチベーションを大きく下げてしまいます。
人が常に少なめの営業で、経営者の肉体的負担が多すぎるのも問題ですが、開業当初の人員は少なめで、常に忙しく動き回っている方がメンタル面ではいい状態を保てるのかもしれません。
まとめ
これまで多くの飲食店の経営相談をさせていただきましたが、経営者様が過去の仕事ぶりを振り返った時に後悔していることで、もっとも聞かれるのは
「もっと経理をちゃんとしていればよかった・・・」なのです。
特に割と早くに店舗の経営が軌道に乗り、数年間営業をされてきた経営者様がこのことをよく口にされます。気前よくお客さんやスタッフにいいお酒をおごり始めた頃が、一番注意するべき時期なのかもしれませんね。