会社を設立したら、配偶者や子どもなどの親族を役員にしたい、と考えることもあるでしょう。もちろん、親族を役員にすることは問題ありません。今回は、親族を役員にするときのメリットやデメリット、注意点について解説します。
親族を役員にするメリット
①「所得の分散」を図ることができる
役員が受け取った給与(役員報酬)には所得税や住民税がかかります。
このうち、所得税は、課税される所得金額が多いほど、高い税率が適用されます。
例えば、一人で毎月200万円を受け取るよりも、夫婦2名がそれぞれ毎月100万円を受け取る方が所得税の合計額は少なくなります。
親族を役員にして、うまく所得の分散を図ることで、節税することができるのです。
②役員退職金を支給することができる
親族が役員を退任する際に、役員退職金を支給することができます。退職金は、支払う会社からすると給与と同じように必要経費となります。一方で、退職金には退職控除があり、退職金を受け取った人にかかる所得税等は通常、給与よりも少なくなります。退職金にはこのようなメリットがあるので、うまく活用するとよいでしょう。
③小規模企業共済に加入することができる
小規模企業共済とは、所得税等の節税を図りながら、経営者の退職金を積み立てていくことができる制度です。会社等の役員は加入資格がありますので、親族も役員となるときは、その親族も加入することができます。とてもお得な制度なので、社長一人で加入するよりも、親族も加入する方が節税のメリットが大きいです。
④親族に経営に参画してもらうことができる
親族が会社の役員になれば、会社の経営に参画することとなります。親族の力を会社経営にうまく活かすことができれば、会社にとってプラスとなるでしょう。
親族を役員にするデメリット
①社会保険料がかかる可能性がある
その親族の年収が130万円以上となる場合は、社会保険の扶養から外れることとなり、その人が社会保険に加入しなければなりません。これにより社会保険料が増えることとなります。
②配偶者控除、扶養控除などを受けることができなくなる可能性がある
その親族の年収が一定額以上となる場合は、配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除などの控除を受けることができなくなります。これにより、本人(社長)の税金は増えることとなります。
③対外的に責任を負う可能性がある
取締役や監査役といった役員は、会社法で決められた責任を負うこととされています。例えば、会社が不祥事を起こすなどして、取引先などに損害を与えたときは、役員が責任を負わなければならなくなる可能性もあります。
親族を役員にするときの注意点
①役員登記が必要
親族を役員にしたときは役員登記をする必要があります。登記を忘れないようにしましょう。
②役員報酬は決議が必要
役員報酬の金額は、株主総会や取締役会などで決議をして決める必要があります。決議をした際は、議事録を残すようにしておきましょう。
③役員報酬は毎月同額を支給しなければならない
税法のルールに従って、役員報酬を支給しなければ、会社の経費とはなりません。定期同額給与の要件を満たすように、役員報酬は株主総会等で決定してからの一年間は、原則として変更することができません。
④役員としての勤務の実態が必要
役員報酬を支払う以上は、役員として勤務している実態が必要です。名ばかりの役員で、勤務している実態がない場合は、会社の経費として認められません。その場合は、会社が支払う法人税等が増えることとなります。
⑤不相当に高額なときは会社の経費とならないこともある
勤務の実態があったとしても、支払っている役員報酬が不相当に高額である場合は、会社の経費として認められない可能性があります。この場合も、会社が支払う法人税等が増えることとなります。
まとめ
親族を役員にすると、節税を図ることもできますし、うまくその親族の力を借りれば会社経営にとってもプラスとなります。一方で、役員だからといって、報酬をいくらでも自由に決めることができる訳ではありませんし、役員としての重い責任を負うこととなる点については注意しましょう。